「残念ながら父の治療には間に合わなかったが、大きな一歩を踏み出すことができ、大変うれしく思っている。この承認でスタートラインにようやく立つことができた」

楽天の持分法適用子会社で、バイオベンチャーの楽天メディカルが開発していたがん治療薬「アキャルックス」が厚生労働省から9月25日、製造販売の承認を取得した。

同社が薬の承認を得るのは初めてのこと。9月29日に開かれた会見で、楽天の会長兼社長で楽天メディカルCEOも務める三木谷浩史氏は冒頭のように述べた。

わずか6カ月間でスピード承認

三木谷氏は、この薬剤の開発に「個人資産を中心に数百億円を投資してきた」(同氏)経緯がある。父親の良一氏が膵臓がんを患ったことがきっかけでがん治療に関心を持ち、「非常に革新的な治療法ということで、全面的に支援を決意した」(同)という。

この薬のベースになる技術を開発したのが、アメリカの国立がん研究所の小林久隆主任研究員らのグループだ。2013年に同氏がアメリカのベンチャー企業と実用化に向けた準備を進めていたところ、技術の詳細を聞いた三木谷氏が臨床試験(治験)の資金などを投資。実用化の後押しをした。楽天メディカルとしての資金調達額は400億円を超える。

今回、この薬が承認された適応症は「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部がん」。頭頸部がんとは、顔からのどにかけての部位にできるがんのこと。手術や抗がん剤など、既存の治療が効かなくなった患者が対象になる。

医薬品の審査には通常12カ月かかる。だがこの薬は、それまでの治験から有効性の高さや画期的な作用メカニズムが認められて、優先的に審査を受けられる対象だった。そのため、2020年3月の申請からわずか6カ月という短期間で承認を得た。