金融市場の関心はもっぱら新型コロナウイルスに感染したアメリカのトランプ大統領の容態に集中している。現時点では、2日に入院したトランプ大統領はわずか3日で退院しており、入退院をめぐる経緯に疑義を唱える論調が浮上している。この点に関して筆者は専門外なので詮索するつもりはないが、すぐに選挙活動に復帰するのは難しいことは想像がつく。選挙本番まで1カ月を切る中、情報発信の機会が強制的に失われるとの見方から、市場予測を行う企業の調査によれば、トランプ大統領の再選確率が顕著に低下しており、バイデン候補の勝率に賭ける向きがにわかに増え始めている。

金融市場では法人税増税や富裕層課税に積極的なバイデン氏の大統領当選は株価にとって逆風と解釈する向きが多い。そのため、トランプ大統領の陽性判明の一報が流れた日本時間午後、NYダウ平均先物は一時前日比600ドル下落する動きが見られた。その後、株価は軟調であるが、衝撃的なニュースの割には落ち着いている。なかには「これで大統領選挙の結果について見通しがついてきた」と不透明感の後退を評価する声もあるが、市場参加者の焦点は今一つ定まっていない印象である。

バイデン当選確率と人民元相場の興味深い符合

株式市場以上に為替市場の反応ははっきりしない。リスクオフムードの高まりに応じて円やユーロ、スイスフランを買う動きが強まるかと思われたが、明確な方向感は見いだせていない。しかし、長い目で見れば注目すべき論点はある。

前述の両候補の予想当選確率(PredictIt社の調査)にドル人民元相場の動きを重ねると、人民元は5月末から騰勢を強めているが、ちょうど同じ時期から両候補の当選確率が逆転しているのがわかる。バイデン候補が大統領になった場合の政策メニューはまだ判然としないが、前述した「増税路線」に加え、「親中路線」というイメージは比較的定着しているように見受けられる。そのことが影響しているのか、それとも単なる偶然なのかは断言しかねるが、興味深い符合であるように筆者は感じている。