それではまずは国家間という大きな話から始めよう。国家は主権、領土、国民で構成される。そして国家のパワーは軍事力、経済力、情報、領土の位置や大きさなどの要素によって規定される。そこにデジタルテクノロジーが新たなパワーとして加わったのが現代である。

米中テクノロジー摩擦に代表されるように、デジタルテクノロジーによる覇権をめぐって各国政府が争っている。なぜならデジタルテクノロジーはサイバー攻撃など軍事と安全保障に直結するものから、自動車や半導体といった国家経済を左右する巨大産業までに関係するパワーとなっているからである。

ここで登場するのが、各国政府が独占していたパワーに挑戦する、デジタルプラットフォーマー企業である。例えば国家が独占していたはずの通貨の発行をもくろんだフェイスブックがそうだ。

国家による独占に挑戦したフェイスブック

フェイスブックはリブラ協会をスイスに設立し、デジタル通貨である「リブラ」を発行しようとした。政府が独占していた通貨発行に手を伸ばしたフェイスブックは、各国政府から猛反発を受けることとなった。

もしもリブラが発行されれば、フェイスブックのユーザー(個人)がそのデジタル通貨を使うことで、一気に20億人を超える人々が使う通貨が登場したかもしれない。

デジタルテクノロジーのパワーによって政府に挑戦するデジタルプラットフォーマー企業を各国政府は規制をもって迎え撃つ。デジタルプラットフォーマーは当然に各国の法律に従う必要がある。

各国政府以外に巨大化したデジタルプラットフォーマーに影響を与えられるとすれば機関投資家が挙げられるだろう。デジタルプラットフォーマーは資本市場における時価総額を経営に利用している。機関投資家は株主として、ESG、つまり環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に対して善をなすべきという観点から牽制することが可能である。

一方で各国政府は自国の企業がグローバルにデジタルテクノロジーを用いてビジネスをする際はそれらを援護する。アメリカのシリコンバレーの企業がEU委員会の規制によっていじめられたとアメリカ政府が思えば反撃するだろう。このとばっちりを受けて一般の企業が経済制裁や規制に悩まされることになる。

外国投資規制でM&Aが中止となり、ファーウェイ問題のように特定企業の製品が使えなくなればサプライチェーンの組み換えが必要となる。

巨大化したデジタルプラットフォーマー企業はまるで政府や公的な存在のように振る舞っている。きっと政府より個人の趣味嗜好について詳しいことだろう。