結局、アメリカ大統領選挙前に「経済対策」で合意することはできなかった――。10月は市場でも何度か期待が高まった経済対策だったが、スティーブン・ムニューシン財務長官と民主党のナンシー・ペロシ下院議長の協議は不調に終わり、時間切れとなった。

政府側は当初の1.6兆ドルの支援予定額を1.8兆ドルへ引き上げ、さらには1.88兆ドルにまで積み増ししたものの、民主党は先に下院で成立させた2.2兆ドルの支援策の規模を譲らなかったという。支援額の引き上げに上院の共和党が猛烈に反対していたことなどもあり、法案成立の可能性は10月末までに消えた。

そもそもドナルド・トランプ大統領が経済対策に対して急に態度を軟化させ、支援額の積み増しを言い出したのは、10月に株価が急落してからだった。民主党側に「株価急落の引き金を引いた犯人」として、批判の口実を与えることを避けたかったのだろう。一方、上院は10月26日に最高裁判事に指名されたエイミー・バレット氏の承認を「無事」に済ませた。

本当に「楽観論」でいいのか?

市場では「民主党のジョー・バイデン候補が大統領選で勝利、議会も民主党が上下両院で多数を取りそうだ。そうすれば今より遥かに大規模の経済対策が打ち出される」との期待が根強い。こうした楽観論が相場を支えていると言っても過言ではない。

だが話をあまり単純に考えるべきではない。今回の大統領選が接戦となる可能性は十分ある。その場合にはどちらが勝利しても票の再集計などの訴訟問題に発展するとの見方が有力だ。最終的な勝者確定が遅れ、混乱状態に陥れば、景気支援策どころの話ではなくなるのは目に見えている。

現在景気の先行きのカギを握るのは、雇用と個人消費の動向だ。10月2日に発表されたアメリカの9月雇用統計は、非農業部門の雇用数が前月比66.1万人増と、予想の80万人を大きく下回る伸びにとどまった。失業率は7.9%と、市場の事前予想の8.2%より大幅に改善した。だがこれは母数となる労働力人口が大幅に減ったことも大きい。実際、「家計調査」をもとにした就業者数は27.5万人という低い伸びにとどまるなど、「強気の内容」とは言えないものだ。