一方、雇用のもう一つの先行指標である失業保険申請件数は、75.1万件(10月24日までの1週間分)と2週続けて80万件台を割れたものの、コロナ禍の前には20万件台が当たり前だったことを考えるとなお高水準だ。パンデミック(世界的大流行)となって半年以上が過ぎたにもかかわらず、依然として多くの人々が失業保険を申請しているという現状は、やはり深刻に受け止めておくべきだ。

クリスマス商戦で消費抑制の可能性も?

雇用の先行きへの不透明感が強く、将来の収入に対して不安が残るという状況下では、人々は財布の紐を固く締めざるを得ない。夏までは「雇用支援プログラム」(PPP)が効果を発揮したことで、中小企業も雇用を維持することができていた。また職を失った人も週600ドルにも及ぶ失業保険の上乗せ給付によって何とか生活水準を保つことができていた。さらに1人当たり1200ドルという個人への直接給付も、かなりの消費の押し上げ効果があった。

だが、7月末で失業保険の上乗せ給付は廃止され、現在は大統領令を基にいくつかの州が給付額を引き下げて「上乗せ」を継続しているだけに過ぎない。PPPはすでに財源が底を尽いた。また直接給付も使い果たされつつある。さらには家賃が払えない人々に対して立ち退きを免除する特例措置も、年末には失効する見込みだ。このまま実行されるとも思えないが、多くの人は「アパートを追い出され、路頭に迷うのではないか」と怯えている。

冬を迎え、懐があたたかいとはとてもいえない。最新の9月の個人所得(10月30日商務省発表)は8月比で0.9%増となっている。だがすでに8月の個人所得は、7月比2.7%減という大幅な落ち込みだったことを忘れてはいけない。ここから税金の支払い分などを差し引いた可処分所得に至っては、同月比3.2%の大幅減だ。背景には前出の失業保険の上乗せ給付廃止があるのは間違いなく、景気の先行きに不安があるなか、このままでは将来的に消費が伸び悩むのは避けられない。

もし、新たな経済対策が新政権発足の来年1月20日以降へ持ち越しとなれば、どうなるか。景気不安はさらに高まる。何よりアメリカの経済に脅威なのは、年末にかけてのクリスマス商戦にピタリと重なることだ。小売業界にとって書き入れ時であるこの時期に、景気支援策が間に合わず、人々が消費を控えるような行動に出ればどうなるか。株式市場もこうした懸念材料はまだ完全には織り込んでいない。クリスマス前後から年末までに大きな調整局面があっても、何ら不思議ではない。

著者:松本 英毅