2020年10月10日、北朝鮮の執権政党である朝鮮労働党は創建75周年を迎えた。同日の深夜、平壌市内の金日成広場では盛大な閲兵式(軍事パレード)が行われ、その他にもコンサートや関連イベントが多く開催された。閲兵式では新型の弾道ミサイル「火星」や「北極星―4人」など多くの新兵器が登場し注目を集めた。

一方で、閲兵式やその後の祝賀会の様子を見ると、これまでと変わった特徴や演出が散見された。兵器の分析に関しては専門家の諸氏にお任せするが、ここでは閲兵式や関連イベントの演出には、北朝鮮メディア特有の「映え」を狙った戦略が垣間見える。

夜間の軍事パレードはメディア映えを意識

金正恩政権では過去に6回の軍事パレードが行われたが、今回のパレードはさまざまな意味で前例にないものだった。まずは深夜に行われたということが挙げられる。参加者は10月9日の夜から広場に入場、深夜0時に日付が変わった瞬間、盛大な歓迎曲とともに金正恩労働党委員長が入場した。パレードが夜間に行われ朝鮮中央テレビで生中継が行われなかった理由だが、当初はICBMなど新型兵器を秘匿するため、もしくはアメリカのトランプ政権に対して遠慮しているためなどと臆測を呼んだ。

しかし朝鮮中央テレビは同日10日のゴールデンタイムに録画編集されたパレードを放映した。パレードでは兵士たちの装備の近代化や新型の戦車、火砲類、弾道ミサイルが登場し注目を浴びた。兵器の秘匿が目的ではないようだ。

ではなぜパレードは夜間に実施されたのか。理由は公表されていないが、現在では「夜間にはアメリカなどの偵察衛星からの画像が悪くなるため」という指摘もなされている。とはいえ、おそらくはメディア映えを意識した演出が目的だろう。暗闇のなか、煌々と照らされた金日成広場と行進する兵士や兵器たちの姿は斬新でアミューズメントパークのパレードのような趣すらあった。

その中でも、夜間に最もふさわしい演出があった。閲兵飛行隊の編隊飛行だ。LEDイルミネーションに彩られたスホーイとミグの両戦闘機が朝鮮労働党の党マークや75周年を意味する「75」のフォーメーションを組み、途中では本来は敵からの攻撃を防ぐための「フレア」」が放たれ、夜空を彩った。このシーンはコックピット内部や飛行機の外側に設置されたカメラが操縦士側のアクティブで緊張感ある視点を撮影し、金正恩委員長の背後のカメラが平壌市内の金日成広場とチュチェ(主体)思想塔、その背後から飛んでくる飛行隊を完璧な構図で映し出した。