バイデン政権の誕生が濃厚になってきた。バイデン政権は外交政策や今後の日米関係をどのように展開しようとするのか。

キヤノングローバル戦略研究所の研究主幹で10月から外交担当の内閣官房参与を務める宮家邦彦氏に聞いた。

深刻化する米国内の両極化

――今回の大統領選の結果についてどのように考えていますか。

米国の民主主義のシステムは機能したと思う。過去を振り返れば、失敗した大統領がいる場合、米国の有権者は反対党の候補に投票してきた。ウォーターゲート事件の後のカーター氏、カーター氏の後のレーガン氏、湾岸戦争の後のクリントン氏がそうで、今回もそうだと思う。米国の民主主義はまだ復元力があることを示した。

しかし、今回の僅差の選挙結果が意味するのは「トランプなきトランプ主義」だ。つまり、白人ナショナリズムやポピュリズム、排外主義、差別主義といった「ダークサイド」と呼ぶべき運動は生き残ったということだ。

トランプ氏がいなくなっても、内向きのアンチ・ワシントン、反エリート主義の部分は残っていて、今後も引き続き両極化が進んでいくのではないか。大統領を替えることはできたが、より深刻な問題である両極化を止めるほどの力はなかった。

今後、バイデン氏のもとで米国民の団結と癒やしがどこまで進むか。一部で言われる暴動が続発するなどというのは、アメリカの民主主義を過小評価していると思う。

――バイデン政権になったとき、外交政策で変わらない部分と変わる部分とは何ですか。

まず変わらない点については、戦略的な優先順位だろう。アメリカにとって最大の懸念は中国だ。次がロシア、その次がイラン。北朝鮮はトップ3には入ってこない。今回の大統領選でもまったく北朝鮮については触れられなかった。イッシューではないということだ。アメリカ国民は北朝鮮のことをよく知らない。

ただし変わるのはアプローチの仕方やスタイル、レトリックなどだ。中国に対してトランプ氏は明らかにけんかを売っていた。その挑発に中国は乗った部分と乗らない部分があった。バイデン氏がトランプ氏と同じようにするとは思わない。

もちろん、オバマ政権1期目のように、中国に対して希望を持って働きかけるやり方は失敗が明らかとなり、オバマ政権の2期目から対中政策は徐々に変化し始めた。その方向は基本的には変わらないが、ニュアンスやレトリックは変わるかもしれない。

著者:中村 稔