そこでカフェ運営会社プロントコーポレーションの商品開発担当者とお寺とで知恵を絞って誕生させたのが、「18品の朝ごはん」でした。最も大事な経典『仏説無量寿経(ぶっせつむりょうじゅきょう』の中で築地本願寺の御本尊・阿弥陀如来は修行時代、人々を救うために「四十八の誓願」を立てたと言われています。

そして、その中で浄土真宗がいちばん大切にしているのが第十八願。簡単な言葉で表すなら、「本当に安心できる世界(つまり浄土) に、命あるものすべてを平等に生まれさせたい」という意味合い。これこそ阿弥陀如来の根本の願いであるとして、第十八願を「本願」と呼んでいます。

本願に因んで18品と決まってから、18品を何にするか試食会をして検討したり、「ご飯とおかゆを選べるようにしよう」という意見が出たり、「定価はどうしよう」と相談したり……。

価格設定は慎重に行いました。「朝食に1800円は高すぎる」と私は反対しましたが、2017年の11月にTsumugiが1800円の朝食を出すようになると、後からオープンしたホテルのカフェの朝食もみんな1800円にそろえてきました。いつの間にか値段がこなれ、築地界隈のちょっと高い小じゃれた朝食の標準価格になったようです。市場は生き物だということを、改めて感じました。

18品の朝ごはんは、「インスタ映えする」という予想外の反応があり、女子大生からシニアまで女性が行列するほどの大人気となりました。ランチはビジネスマンもやってきますし、午後のお茶を飲みながらノートパソコンを開いて仕事をしている人の姿もあります。

まさにご縁がなかった方々とのご縁が食事を介してできていきました。

インフォメーションセンターには、カフェのほかに、しゃれた仏具や雑貨を900アイテムそろえたオフィシャルショップ、仏教の入門書、専門書、経典や精進料理のレシピ本などを販売するブックセンターが併設されています。開かれたお寺のイメージの中で仏教にも親しんでいただき楽しんでいただこうという工夫です。

総合相談窓口には係員だけでなく僧侶も常駐しています。「自分が死んだら誰がお墓の面倒を見てくれるのか」「お葬式はどうしよう」「いなかのお寺にあるお墓を東京に移したいが?」といった都会に住む誰もが抱える悩みを、気軽に相談していただける拠点となっています。

お寺にも「デザイナー」が必要 

築地本願寺は、築地のランドマークとしてもっと注目されていいはずです。歴史ある個性的な建築物はインパクトがあり、一度見たら忘れられるものではありません。

しかしそれは「見えれば」の話。プロジェクト始動前は、正門右手の築地4丁目の交差点からすら本堂の外観がよく見えませんでした。

こうして木々が建物を覆い隠し、せっかくの本堂が見えなくなり、そればかりか「入りにくい」「いや、用がないのに入ったらダメだろう」という閉鎖的なイメージも与えていました。

「木々を伐採して、広々とした開放感のある境内に変える。外からも見えるようにする。そして誰もが訪れたくなるようなインフォメーションセンターをつくろう!」

築地本願寺では、インフォメーションセンターだけでなく、境内には誰もが安心して入れてお参りしやすい「合同墓(ごうどうぼ)」の建設も予定していました。まずは見える外観から一気に変えるのです。