そうと決まれば行動あるのみですが、私は建築会社などに直接働きかける前に、デザイナーを探すことにしました。

心の拠り所という宗教の大切な役割は、目に見えないし、感じるしかない。そこで私はプロジェクト始動にあたって、トータルイメージをきちんとつくり上げてくれるデザイナー、クリエーティブ・ディレクターが不可欠だと考えたのです。

「木々は造園会社に伐ってもらおう」「インフォメーションセンターはいい設計士に頼めばいい」。こんな具合に個別にやっていたら、出来上がったときのイメージはばらばらになってしまいます。

インフォメーションセンター内には「お寺の本屋さん(ブックセンター)」も併設(写真提供:築地本願寺)

総合的にすべてを見渡す人がいて、その指揮官のもとで「新たな築地本願寺のイメージ」をつくり上げなければ、築地本願寺の再構築――リブランディングは成功しないでしょう。

そこでお願いしたのが、現代美術作家でデザイナーの中山ダイスケさん。何人もの候補者にお会いしましたが、「私自身、お寺や宗教に興味があります」と言ってくださいました。

実績やデザインやアートディレクションの能力はもちろんのこと、私たち僧侶の考え方やセンスをくみ取り、理解する力が抜群なのです。

“カメラ女子”にも入ってみたいと思わせる場所

木々がなくなり、朗々と開けた境内は、明るい空間に生まれ変わりました。2017年11月に落成したインフォメーションセンター、合同墓のある礼拝堂はまるで現代美術館のようなのに、異形ともいっていいインド様式の本堂と不思議にマッチしています。また、境内からは有料駐車場をなくし、創建当時のデザインの石模様と芝生の文様を再現しました。

築地本願寺は私たちの思惑どおり「入ってみたいと思わせる、入りやすい場所」に変わりました。外国人観光客や一眼レフをぶら下げた“カメラ女子”など、今まで見かけなかった人の姿が見られるようになったのです。

銀座や築地でのショッピングのついでに、カフェに立ち寄る、写真を撮るために境内に入ってみるという方々が築地本願寺に親しみを持っていただくことで「ご縁をつくる」。

そのご縁をつなげる、ご縁がつながった方々との関係をさらに深めることに、私たちは日々取り組んでいます。

著者:安永 雄彦