――供給遅延により、他社にシェアを奪われていませんか。

今は供給できる会社が勝つという状況だ。だが、他社が先行しても主力の大容量インクタンクモデルはインクカートリッジモデルに比べ、(消耗品の交換頻度が少なく、コストも抑えられるので訴求力が強く)巻き返しが十分にできる商品だ。

一方で、シェア維持には、いいサービスをいかに提供できるかも重要だ。例えば、日本だと会社の資料を自宅で印刷するにはセキュリティ上の問題がある。会社側がどこで資料が印刷されたかを把握・管理できるようなサービスも考えている。こうしたサービスで差別化を図り、継続して顧客に使ってもらえるようにしたい。

オフィス市場への展開を強化

――ペーパーレス化が続く中、オフィス向け複合機に注力するなど、セイコーエプソンはプリント関連事業を強化しています。

オフィスを中心に、紙への印刷が増えることは絶対にない。しかし、当社のインクジェット複合機は、学校など文教市場では強いが、オフィス市場では十分に展開できておらず、まだまだ開拓の余地がある。

おがわ・やすのり/1962年生まれ。東北大学大学院工学研究科修士課程修了後、1988年セイコーエプソン入社。VI事業推進部長、ビジュアルプロダクツ事業部長などを経て、2020年4月から現職(編集部撮影)

今後は(他社が強い)レーザープリンター複合機からインクジェット複合機に置き換えていくことが重要になる。レーザープリンターに比べ、インクジェットプリンターは粉塵も出ず、消費電力も少ない。環境性能がよい点をしっかり訴求すると同時に、ラインナップの拡充や営業活動の強化を通してレーザープリンターからの置き換えを推進していく。

一方で、ペーパーレス化への対処としては、当社の強みである高精度のプリントヘッド技術をどう活用するかも重要だ。大きな戦略としてプリントヘッドはインクを変えればさまざまなものに印刷できるため、布やラベルなど紙以外へ印刷需要を広げていく。

かつてと異なり、現在はインクジェット技術をオープンにして、スタートアップなどと協業を始めている。例えばプリントヘッド技術を使って回路基板を作る東京大学発のスタートアップ・エレファンテックと提携した。

サービス面での差別化も重要だ。コロナ禍で、1カ所で大量生産することから分散体制への転換が始まっている。それに対応して、遠隔地から一括で複数の印刷機の稼働状況や品質を管理するクラウドサービスの展開も始めている。プリントヘッドの活用を通じて産業構造の革新につなげていきたい。