新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、初めてのお正月を迎え、「おせち料理」にも異変が生じている。

「売り切れたスピードは例年の倍以上で、異常な伸びだった。いくら巣ごもりと言っても、以前からおせちを食べる文化がない人には響かないと思っていた。なぜこんなに売れているのか正直把握できていない」

百貨店大手の三越伊勢丹でおせち販売を担当する中本光昭マーチャンダイザーは驚きを隠さない。同社が展開する伊勢丹では、2020年10月の予約開始当初から注文が好調で、売り上げは前年比で1割ほど増えた。

EC(ネット通販)やGMS(総合スーパー)でも同様だ。特設ページを設けたEC大手の楽天市場では、10〜11月における注文数は前年比で倍増。GMS大手のイトーヨーカドーでは、おせちの売り上げが前年比4%増加すると当初見込んでいたが、ふたを開けると約10%も増加した。

売れ筋は「個食」と「高額品」

この「おせち特需」の背景には、新型コロナの感染拡大によって年末年始の帰省や海外旅行を諦め、お正月を自宅で過ごす人が増えたことがある。イトーヨーカ堂の小畑盛揮マーチャンダイザーも「コロナ感染が再拡大してから巣ごもりのマインドが高まり、おせちの販売が急激に増えた」と振り返る。

売れ筋商品のトレンドにも大きな変化が見られた。キーワードは「個食」と「高額品」だ。

おせち料理と言えば、帰省先で家族や親戚が集まり、多人数で大きな重箱おせちをわけ合うのが通常だ。しかし、今回の年末年始は帰省を控える家族や個人が増えた結果、少人数用おせちの需要が急増。イトーヨーカドーでは一段重おせちの販売が前年より25%増加したほか、楽天市場でも1人用おせちが人気だった。

「家族それぞれが違った味を楽しめるように別々の一人前おせちを人数分頼んだり、一人暮らしでも気軽に味わったりできる」(楽天広報)

感染対策として同じ料理を共有することを避ける意識の高まりも、おせちの風景を変えた。重箱の1段分に1人分の料理が盛られて取り分ける必要がないおせちの売れ行きが例年以上に好調だ。三越伊勢丹ではそうした状況を当初から想定し、取り分け不要のおせちの商品数を1.5倍に増やして対応したにもかかわらず、早々に売り切れたという。