高齢ドライバーによる交通事故が問題となる中、近年はお年寄りに対して運転免許証の返納を促す動きが広がっている。一方、生活の足を自家用車に依存している街では、路線バス網がすでに壊滅しているところも少なくない。そのような地域では、自家用車に代わる移動手段をどう提供するかが大きな課題となっている。

こうした問題への対応策として、静岡県湖西市は市内に大規模な工場を構える企業と共同で、社員用送迎バス(企業シャトルバス)に一般市民が相乗りできるシステムの実用化に向けた実証実験を行っている。「自家用有償旅客運送」の制度を活用し、企業のシャトルバスを使って市民を乗せるのは国内初の取り組みだ。

MaaSではなく「BaaS」

筆者は同市の実証実験「企業シャトルBaaS実証実験」のモニターとして、実際に同市内を企業シャトルバスに乗って移動してみた。今回の実証実験は2期に分けて行われ、筆者が体験したのは第1期(11月30日〜12月25日)だ。使用するのは地元企業4社のシャトルバスで、2社ずつに分け、それぞれ4週間のトライアルを行う。

ところで、「BaaS」とは聞き慣れない言葉だ。さまざまな移動手段をシームレスに繋ぐ概念「MaaS(マース)」という用語があるが、湖西市では「バス(Bus)を使ってMaaSに取り組む」という趣旨から「BaaS」という言葉をつくったという。

静岡県の最西端にある湖西市は、その名の通り浜名湖の西側に位置する。同県内では浜松市と並ぶ自動車産業の集積地となっており、市内にある自動車関連の製造拠点としてはスズキの完成車工場のほか、自動車組み立てに使われる部品工場が数多く立地している。

湖西市には「コーちゃんバス」と名付けられたコミュニティバスがあり、同市が地元の交通事業者に運行を委託している。コーちゃんバスは2014年、それまで走っていた「湖西市自主運行バス」の路線を再編する形でスタート。現在は主にお年寄りの通院や買い物の足として利用されている。