今年はどこへも行かない静かな正月を過ごした。『孤独のグルメ』の再放送を何度も見て、「箱根駅伝」はスタートからゴールまで見てしまった。本連載への年明けの「書き初め」には、少しばかり遠方をにらんだ「2020年代論」を語ってみたい。

アフター・コロナ時代は100年前のアメリカが参考に

この年末年始は、「コロナさえ終わってくれれば……」という挨拶をよく聞いた。正直、その通りである。そしてこれは信じていいと思うのだが、パンデミックはいつか必ず終わる。

とはいえ、アフター・コロナ時代がコロナ以前に戻るかというと、たぶんそうはいかないのであろう。2020年を境に、世界はくっきりと変わってしまうことになるはずである。

今から100年前にあたる1920年代のアメリカの歴史が、2020年代を生きるわれわれにとってのひとつの参考になりそうだ。1917年から1919年にかけてのアメリカでは、第1次世界大戦への参戦により11万6516人、スペイン風邪の流行により67万5000人が死亡した。

当時のアメリカの人口は1億人程度なので、実に総人口の1%に迫る人命が失われたことになる。Covid-19による全米の死者数は、本稿執筆時点で35万人といったところである。これも歴史を変えるには十分な規模と言えようが、ともあれ100年前のアメリカの「喪失感」は深かった。

1920年の大統領選挙では、オハイオ州選出の共和党上院議員、ウォーレン・ハーディングが出馬した。彼が掲げた選挙スローガンは「平常への回帰」(Return to Normalcy)であった。「もう二度と欧州へ戦争に出かけたりはしない、古き良き時代のアメリカに戻るのだ」というメッセージは、世界大戦とパンデミックに疲れた多くの国民の心に響いた。

前職のウッドロー・ウィルソン大統領(民主党)は、アメリカを第1次世界大戦参戦に導き、戦勝後のパリ講和会議では国際連盟を創設するなど八面六臂の大活躍で、1919年のノーベル平和賞も受賞している。ところがアメリカ議会は、国際連盟への加盟を拒否してしまう。ウィルソンは任期の最後は脳梗塞に倒れ、まったく精彩を欠いていた。