ただ、タイミングが悪かった。博多―釜山、下関―釜山、対馬―釜山を合わせた日韓旅客定期航路全体の輸送実績は2018年度に過去最高を更新したものの、その足元では日韓関係の冷え込みが進行しており、2019年度の上半期(4〜9月)には前年同期比36%減とマイナスに転じた。JR九州は「欧米の団体客を中心に営業強化する」と強気の姿勢を崩さなかったが、そこへ新型コロナウイルスの感染拡大が拍車をかけた。

日韓関係の悪化に新型コロナのダブルパンチで就航時期が見通せない。JR九州は2019年度連結決算でクイーンビートルの建造費全額を減損損失として計上した。クイーンビートルは収益を生まない資産とみなされた。

新型コロナはクイーンビートルの建造にも影響を与えた。同船はオーストラリアの造船所で建造されたが、新型コロナの世界的な感染拡大により、オーストラリア政府は外国人の入国を制限。このため、クイーンビートルに搭載される機器のメーカー検査員が入国できず、完成検査ができない状態となったのだ。当初5〜6月に予定されていた日本への回航は大幅に遅れ、10月にようやく実現した。

国内航路での活用を模索

日韓航路が再開するまでの間、JR九州は国内航路での活用を模索した。カウントダウンクルーズに続き、1月中旬から博多港近海を周遊するツアーを行う計画もあった。ただ、そのためにはある条件をクリアする必要がある。船舶には、国内航路を運航できるのは原則として国内船籍の船舶のみと定めた「カボタージュ制度」という世界で広く採用されているルールがある。日本でも船舶法がカボタージュ制度を定めている。

ビートルは日本国籍の船舶だが、クイーンビートルはコスト削減の観点から、船舶登録に関わる手続きが簡素で登録税が安価なパナマ船籍にした。しかし、カボタージュ制度により外国船籍の船舶は国内航路の運航はできない。

とはいえ例外はあり、船舶法は国土交通大臣が特別な許可を与えたときはこの限りではないとしている。九州運輸局は、「JR九州の希望に沿うよう対処する」という姿勢を示し、JR九州は国内就航を可能とする特例措置の申請を行うべく、九州運輸局と調整を始めた。