そして3つ目は、「ジャック・マー行方不明」報道とも関連する「当局との関係の変化」だ。アリババは12月、独占禁止法違反などで二度行政処分を受けた。

金融子会社でモバイル決済アプリ「アリペイ(支付宝)」を運営するアント・グループ(螞蟻集団)は史上最大のIPO目前で、当局の指導を受け上場延期を余儀なくされた。同社は銀行の預金仲介など金融事業から手を引くよう迫られ、ジャック・マー氏のカリスマ性に影を落としている。

欧州の規制は老人で、中国は未成熟な青少年

これまでアリババと中国政府は良好な関係を維持してきたが、上海で10月に開かれた金融フォーラムで、マー氏が中国当局を批判し状況が一変した――。というのが最近の欧米や日本の報道の趨勢だ。

ただマー氏の演説全体を聞くと、「当局批判」のくだりは報道が一人歩きしている感も受ける。実際、アント上場延期が発表されるまで、同氏の演説を「中国」当局批判と結びつけた報道はほとんど見られなかった。

約20分の演説で、マー氏が「老人クラブ」「古い体制」と強く批判した先は、デジタル通貨を厳しく規制しようとする欧州の金融当局だ。Facebookのグローバルデジタル通貨構想「リブラ」を念頭に置いているのは明らかで、「デジタル通貨がまだ普及しておらず、価値創造の段階にある今は、(古いルールで縛るのではなく)デジタル通貨を通じて新しい金融システムを考える必要がある」と語っている。

マー氏はさらに、中国の金融システムを欧州と比較し、「成熟したエコシステムを持たない青少年」「大銀行が大河、血液の動脈の役割を果たしているが、ダムや渓流のような生態系がないため、干ばつや洪水ですぐに死んでしまう。健全な金融システムを構築しなければならない」と語った。