①に関しては、通常は業務委託契約ですし、②に関しては、番組や舞台に応じて出演料が決められていたり、給料制であっても稼働時間が給与額の基礎になっているわけではありません。

③に関しては、当人の個性が重要な要素だからこその芸能人であって、これを否定するならば、芸能人であることと自己矛盾してしまいます。④に関しても、会社員のように定時が決められているわけではありませんので、通常は時間的に拘束されているとは言えないでしょう。

結局のところ、厚生労働省の通達および芸能人の働き方の実態を踏まえると、芸能人が労働者として扱われ、労災が認められるためのハードルは、とてつもなく高かったということです。

これに対し、今回の法改正によって、芸能人に労働者性があるかどうかにかかわらず、労災保険の加入を全面的に認めるという法制度になりました。すなわち、芸能人にとって、労災保険の適用を受けるためのハードルが大幅に下がったということがいえます。

通勤時の災害も補償される

第2のメリットは、労災保険に加入すると、通勤時の災害も補償されるようになるということです。

労災保険の補償は、業務中の災害だけではなく、通勤時の事故などよる傷病にも及びます。

自宅からテレビ局や劇場などの仕事現場への往復や、複数の現場で仕事がある場合の1つ目の現場から2つ目の現場への移動中など、業務に付随する移動時に発生した傷病は広く労災保険の対象となります。芸能人は移動も多いですから、大きな安心感を得ることができるでしょう。

ただし、現場から自宅への移動中に、ショッピングをしたり会食をしたりなど、「寄り道」を挟むと、寄り道の後に発生した事故については、労災保険の適用除外となるため注意が必要です(食料品の購入など、日常生活に必要な寄り道は可能)。

第3のメリットは、労災発生時に、アルバイト先の賃金分の休業補償も受けられるということです。収入の確保のため、芸能活動と並行してアルバイトを行っている芸能人も少なくありません。

そのような状況の人が、舞台からの転落で骨折をしたなど、芸能活動中の事故により大きなケガをしてしまった場合、アルバイト側での就労もできなくなってしまうので、死活問題となります。