ワールドの担当者は「都心の百貨店を中心に客足の戻りが弱く、世の中の変化への対応をより急ぐ必要があると判断した。今後は主力ブランドにリソースを集中させ、生活雑貨などの領域も強化していきたい」と話す。

アパレル企業がこぞって人員削減に踏み切るのは、業界の先行きに対する不安が高まっていることを物語る。コロナ禍で一気に需要が蒸発した航空業界などと異なり、アパレル業界は2020年以前から、消費者の衣料品に対する低価格志向の強まりやカジュアル化が追い打ちとなり、業績悪化に苦しむ企業が増えていた。

百貨店を主要販路とする三陽商会は、2015年にライセンス契約が終了した英国ブランド「バーバリー」の穴を他のブランドで補えずに2016年度から営業赤字が継続。ワールドは2015年に銀行出身の上山健二社長(現・会長)が就任して以降、不採算ブランドのリストラや人員削減で収益性こそ改善したものの、2019年度の売上高は5年前比で2割減った。ライトオンも、アメカジブームの低迷に加え、ショッピングセンター向けのブランドとの価格競争が激しく、2017年度と2019年度は営業大赤字に沈んでいた。

元に戻るという見通しが立たない

コロナ禍から在宅勤務が浸透するなど、消費者の生活スタイルが大きく変わった。スーツやジャケット、オフィスカジュアル系の衣料の需要は今後さらに縮まるとの見方は根強い。また、2020年の秋冬には無印良品やジーユーが衣料品の販売価格の引き下げを相次ぎ発表しており、価格競争も一層拍車が掛かりそうだ。「コロナが収束しても、売上高が従前の水準に戻るという見通しはまったく立てられない」(大手アパレルの中堅社員)。

レナウンの経営破綻の影響もあり、アパレル企業に対する金融機関の視線は厳しさを増している。複数のアパレルの幹部は「銀行は借入期間の延長には応じてくれても、それなりの規模の新規融資枠の設定は非常に難しくなっている」と嘆く。コロナ影響が長引くとみて、金融機関からの信頼を得るうえでも、体力のあるうちに人員削減でコスト圧縮を急ぎ、収益体質の改善を図ろうとするのは当然の判断とも言える。