その戦いの統括者は誰だったのか。4年前の選挙で傘下の労働者の離反を許してしまったアメリカ労働総同盟産別会議(AFL-CIO)のワシントンの政治局トップ、マイケル・ポドホルザー氏である。同氏は民主党の予備選挙が始まる前から、さまざまな同党系の組織やデータアナリティクスの専門家と一緒に、バーチャル会議を繰り返したとされる。どうしたら現職の大統領を倒せるか。彼らがコロナ禍のなかで出した結論こそ「郵便投票で勝負を決めてしまうこと」だったのである。 

コロナを最大限利用した民主党

因果関係は証明できないだろう。だが昨年、民主党や主要メディアはコロナ禍が始まるといち早く中国からの入国をストップさせたトランプ氏を、「外国人排斥、人種差別主義者だ」と攻撃しはじめた。

さらに3月の後半になると、民主党の予備選でそれまでトップ争いをしていたビート・ブティジェッジ氏等が、突如、下位で低迷していたバイデン氏の下に集結した。そこから主要メディアのトランプ氏のコロナ対応への集中攻撃には拍車がかかった。

またほぼ同時に、当初「マスクはほとんど効かない」と言っていた国立感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ氏も発言を転換。「マスクは二重にすれば効果がある」などとパフォーマンスを示した。 

いずれにしても、コロナ禍を最大限利用することで、民主党は有権者を投票に行かせるのではなく、投票箱をできるだけ有権者に近づける手法をとった。そして見事にこの作戦は成功した。

だが、極端に言えば這ってでも投票所に行き、自分の意志を示すことが民主主義の原点であり、義務と考える保守思想の共和党支持者には、この結果は受け入れられない。だからこそ、民主党とバイデン陣営は、選挙後、トランプ陣営の起こしてくるであろう反発も、すべて準備していた。

その一端が、「TIPリポート」(超党派組織の「Transition Integrity Project」(超党派で誠実な政権移行を支援するプロジェクト、ジョージタウン大学教授のローザ・ブルックス氏などが参画)がまとめた報告書)だった。

さらに、想定される騒乱を「投票日」「開票」「選挙人選定」「選挙人投票」「1月6日の議会による大統領選の結果承認」の5段階で管理。
このすべての段階で敗北を認めないトランプ氏が仕掛けてきそうな反発への対抗策を、800人超とも言われた有能な弁護士が準備していた。この過程では、フェイスブックCEOのザッカーバーグ氏や、ツイッターCEOのジャック・ドーシー氏などからの協力も取り付けたとされる。