とにもかくにも、選挙戦ではとてつもない大風呂敷を広げて、左派のバーニー・サンダース氏などの票も取り込み、反トランプの票をかき集めてバイデン政権は誕生した。

「時間がない」バイデン政権

だが、民主党は、2008年の大統領選挙でバラク・オバマ氏が大統領になったものの、2010年の中間選挙で下院を失ってからは、オバマ政権は重要法案を何も通せなかった。

それを考えると、バイデン政権には多くのハードルが課されている。まずはコロナ対応と救済の追加策をやるとして、それが終われば最低賃金の改定。その後はミレニアル世代がクビを長くして待つ学費ローンの免除。さらには黒人への賠償。そして究極は、民主党の優位を恒久化するためのワシントンDCの州へ格上げ、さらに最終的には最高裁の「リサイズ」(判事の数を増やし、保守派の判事を少数派にすること)までしなければならない。

これらの案件を、素早くをやり遂げるにはどうすればいいのか。そのうえで欠かせないのが、上院の「フィリバスター(議事妨害)制度」を辞めてしまうことだ。ところが、廃止をめぐっては早くも身内の民主党の上院から2人の離反者を出してしまった。

このあたり、強引な手法で大統領選挙に勝利しても、やはり影響が出るものだ。もしこのような反動が次の中間選挙に出て民主党が負けるとどうなるか。前出のオバマ政権のようになってしまう。法案成立のための確実な時間は、実質今から2年弱だけである。つまりバイデン政権は余計なことなどしている暇はない。

では何を優先するのか。その最も重要な点で、バイデン政権は不透明である。にもかかわらず、つい先日までは、トランプ氏の弾劾に時間を割かなければならなかった。その理由は2つある。まずは前述のようにバイデン政権が一枚岩からは程遠い状況であり、求心力を維持しなければならなかったこと。そして2点目は、こちらのほうがより重要だが、トランプ氏個人の「天才性への恐怖」である。「トランプ氏をもはや二度と大統領選挙に出してはいけない」という恐怖だ。民主党とリベラル陣営からすれば、トランプ氏の政治生命は、ここで100%断ち切っておく必要があるのだ。