一方、財政政策の陣頭指揮をとるジャネット・イエレン財務長官は、2月12日のG7財務相・中央銀行総裁会議で「今が財政拡張の時だ」と主張した。実現を目指すアメリカンレスキュープランを含めて、今後も拡張的な財政政策を継続する姿勢を、日欧の財政当局に対して強く示した。

こうしたなかで、元財務長官でハーバード大学教授のローレンス・サマーズ氏が、「過去1世代に経験することがなかったようなインフレ圧力を引き起こす可能性がある」とバイデン政権下での財政政策に対する懸念を表明したと報じられた。

かつて民主党政権に仕えた大物経済学者から、財政政策の規模が大きすぎるとの見解が出されたことは、ちょっとした論争になりつつある。この議論の行方がバイデン政権の今後の財政政策運営に影響すれば、株式市場の先行きに影響を及ぼしかねない。

この議論をどう考えればいいのか。まずサマーズ氏は、追加財政政策が必要であると主張している。同氏は、2013年の時点で長期停滞論を唱えて、金融政策に加えて拡張的な財政政策を行う必要性をいち早く指摘しており、以前から同氏の基本的な見解は変わっていないとみられる。一方、バイデン政権は、アメリカンレスキュープランの予算規模(1兆9000億ドル)に加えて、今後インフラ投資を拡大する意向を示している。これらの財政政策によって、将来インフレ加速が起きるリスクにサマーズ氏は言及したということである。

大規模な財政金融政策でインフレは起きるのか

日本のメディアでは、財政金融政策の効果に対して懐疑的な見方が多いが、確かに財政金融政策を過大に行えば、それは行きすぎたインフレをもたらす。この点では、サマーズ氏の指摘は妥当に思われる。実際には、アメリカンレスキュープランは、議会での議論を経て、ある程度削減される可能性が高い。これまでの危機対応の政策対応は大規模に行われたが、これらだけでは、サマーズ氏が懸念を示すような大幅なインフレが起きる可能性は低いと、筆者は考えている。

新型コロナ対応の経済政策は、失業保険給付の上乗せ、小切手給付、など新型コロナの影響を受けたサービス業などに従事する低所得者を支える側面が大きい。これらの家計への支援金が個人消費に回る部分は多く、新型コロナの影響で経済活動の停止を迫られた業界の基盤を支える意味でも必要不可欠である。2020年半ばからアメリカ経済の回復は続いているため、これからの政府による補償政策は、支給対象をより限定することが望ましいだろう。