3.星野仙一(プロ野球選手・監督)
迷ったら前へ
苦しかったら前に
つらかったら前に
後悔するのはそのあと、そのずっとあとでいい。

怒鳴る、鉄拳が飛ぶ。監督当時の星野仙一は問答無用の“瞬間湯沸かし器”だった。よく言えば熱血漢。いまの時代で言えば「暴力的パワハラ」である。元中日ドラゴンズの投手で、数々の最年長記録を更新した山本昌が、星野の監督時代を振り返って私にこう言った。

「怖い。とにかく怖かった。いまでも電話でしゃべるだけで、僕は直立不動になってしまう」

それでも選手たちは慕った。なぜか。山本昌は続けて言った。「すべて選手のためを思ってのこと」──それがわかっていたからだ。山本が自動販売機でジュースを買い、取り出し口に左手を差し入れるや背後から星野に頭を叩かれた。「この野郎! 突き指したらどうするんだ!」。山本は左腕投手だった。

「迷ったときは前へ」──。星野が口うるさく選手に言った言葉だ。「前に出て失敗したら後悔せん。下がって失敗すれば後悔するやろ」。この一言で若手は伸び伸びとプレーに集中できると、星野は取材で私に語った。鉄拳、怒声が現代に容認されるわけではない。

だが、指導に万言を費やそうとも、リーダーに本気の愛情がなければ選手は絶対についてこない。これだけは時代を超えて普遍の事実なのだ。どれだけ真摯に熱くなれるか。部下の信望と尊敬は、リーダーの熱量に比例する。

金持ちになることは重要ではない

4.スティーブ・ジョブズ(アップル社共同創業者)
墓場で一番の金持ちになることは私には重要ではない。夜眠るとき、我々は素晴らしいことをしたと言えること、それが重要だ。

ジョブズは妥協を許さない。「できないはずがない。君ができないなら他の人間にさせるだけだ」──激しい叱責と、容赦のない人事異動。甘さは微塵もない。それでも部下の信望を集めた。2011年、56歳の若さで死去。彼のリーダーとしての魅力とは何だったのか。

アップルを巨大IT企業に育てたジョブズは一貫して、私たちはいかに生きるべきかを、ビジネスという場において熱く語り続けた。「お金が目当てで会社を始めて成功させた人は見たことがない。まず必要なのは、世界に自分のアイデアを広めたいという思いなのだ。それを実現するために会社を立ち上げるのだ」。利潤追求を離れて会社は成立しない。それでもジョブズは、お金が目当てであってはならないと信念を説く。

「私は才能をバックアップする」「即戦力になるような人材なんて存在しない。だから育てるんだ」──この言葉に奮い立たない部下はいない。「毎朝、鏡の中の自分に問いかけてきた。“もしも今日が人生最後の日だとしたら、今日やろうとしていることをやりたいと思うだろうか?”と」。この言葉に誰もが胸を抉られるだろう。

ジョブズの言葉が琴線に触れるのは、人生を真摯に見つめた彼の生き方にある。「この人ならわかってくれる」──リーダーの魅力はこの信頼感なのだ。