電気自動車(EV)の動力源である車載電池は、車両の製造コストの約4割を占めるとされる最も高価な部品だ。そんななか、電池の種類を変更してコストダウンを図り、価格に敏感な顧客への訴求を試みるEVメーカーが増えている。

中国の新興EVメーカーの小鵬汽車(シャオペン)は3月3日、「リン酸鉄系」のリチウムイオン電池を搭載するニューモデルの投入を発表した。同社がリン酸鉄系電池を採用するのは初めてであり、5月にデリバリーを開始する予定だ。

ニューモデルはEVセダン「P7」の追加グレード「後輪駆動・標準航続距離タイプ」として登場する。1回の充電で走行できる距離は三元系のリチウムイオン電池を搭載する従来グレードの「後輪駆動・長航続距離タイプ」より約100キロメートル短いが、価格は2万元(約33万円)安い。

なお、財新記者は独自取材を通じて、小鵬汽車にリン酸鉄系電池を供給する電池メーカーが中国の車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)であることを確認した。

最大の弱点は低温環境下での性能低下

リン酸鉄系と三元系の電池は、それぞれ一長一短がある。リン酸鉄系の強みは(熱暴走が起きにくいため)相対的に安全性が高く、長寿命かつ低コストであることだ。しかし、エネルギー密度や外気温の変化への耐性では三元系に及ばない。

中国では、EVに対する政府の補助金で航続距離のより長いクルマが優遇されていたため、以前はEVメーカーのほとんどが(エネルギー密度で勝る)三元系電池を採用していた。しかし2019年から補助金の削減が始まると、コスト重視の観点からリン酸鉄系電池の長所が見直され始めた。

ある自動車大手のエンジニアは、「リン酸鉄系電池の調達コストは三元系電池より約15%低い」と話す。車載電池の業界団体のデータによれば、リン酸鉄系電池のEVへの搭載量は2020年に前年比20.6%の大幅増を記録。対照的に、三元系電池の搭載量は同4.1%減少した。

本記事は「財新」の提供記事です

ただしドライバーの立場では、リン酸鉄系電池の最大の弱点は低温環境下でのパフォーマンス低下だ。今冬は中国北部が厳しい寒さに見舞われるなか、リン酸鉄系電池を搭載するEVの一部は満充電後の走行可能距離が著しく短くなり、最悪の場合には走行不能に陥ってしまった。

(財新記者:鄭麗純)
※原文の配信は3月3日

著者:財新 Biz&Tech