今でこそシェアを落とすものの、昭和の時代はトヨタと国内ナンバー1の地位を巡って鎬(しのぎ)を削っていたのだ。大衆車メーカーとして長い歴史を歩んできた日産にとって、ノートのような大衆車こそ、日産の正統派だといえる。

新型ノートのプレーンで落ち着いた走りは、実際のユーザーニーズにも合致するはずだ。実のところ、ノートのユーザーは高齢者が多い。なんと、50代以上が7割を占めるという。

そうしたユーザーに対して、新型ノートは「ハイブリッドのクリーンさ」「省燃費」「静粛性の高さ」「先進運転支援システム」「質感の高さ」といった価値を提供する。「かつて大きなクルマに乗っていたが、年をとったので、もっと小さくて安全、そしてクリーンなクルマに乗りたい」と思う高齢者には、まさに意中の1台となるのだ。

ただし、高齢者の中にも「もっと刺激的な走りが欲しい」と考える方もいるだろう。また、「若々しさや、きびきびとした走りが欲しい」という若い世代もある。そうしたニーズに対しては、スポーティにカスタマイズされたNISMOバージョンが、販売促進のテコ入れの意味も込めて追加されることだろう。なお、内外装の高級感を高めたオーテックバージョンがすでにラインナップされている。

専用の内外装が与えられ、上級グレードに位置付けられる「AUTECH」(写真:日産自動車)

経営戦略「日産NEXT」を体現する1台

ガソリン車を廃し、ハイブリッド専用車となることで価格帯を高めた新型ノート。低価格帯グレードをやめたことで、販売台数は先代モデルほど伸びないだろう。

実際に発売後1カ月の初期受注は2万0044台と、トヨタ「ヤリス」の約3万7000台、ホンダ「フィット」の約3万1000台と比べると少なかった。2018年のように登録車ナンバー1は、さすがに無理ではないだろうか。

しかし、数こそさばけないものの、1台当たりの利益は高められる。これこそ、日産の経営戦略「日産NEXT」の「数を追わない」というコンセプトに則った姿だ。先代よりもちょっとリッチになった、ご飯。それが新型ノートだったのだ。

著者:鈴木 ケンイチ