会見台に向かう菅首相が小野氏の前を通った際には深々と頭を下げ、ほぼよどみなく司会進行役をこなした。質問者を指名する際には社名と姓で呼びかけ、「初舞台とは思えない落ち着いた司会ぶり」(政府筋)で、記者団との目立ったトラブルもなかった。

ただ、質疑は長引き、会見時間は約73分間と過去最長となった。小野氏は退出する菅首相らに「申し訳ありません」と頭を下げた。

女性外交官の新しいロールモデル

小野氏は1988年、外務省にいわゆるキャリアとして入省。一橋大出身で、同期で女性は同氏1人。同省の女性キャリアは小野氏が20人目とされ、雅子皇后が1期先輩。現在も親しく交流を続けているとされる。

小野氏は入省後、同期のキャリアと職場結婚し、多忙な海外勤務を続けながら、「夫の協力」(小野氏)も得て育児と仕事を両立させてきた。まさに「女性外交官の新しいロールモデル」(外務省幹部)とも呼ばれる存在だ。

中学生時代には青少年読書感想文全国コンクールで、東京大空襲をテーマにした『ガラスのうさぎ』の感想を書いて内閣総理大臣賞を受賞した。小野氏は「それが世界平和を願う私の原点」と語る。

高校時代に読んだ女性外交官の新聞記事に触発され、一橋大に進学。「友人たちの進取の気性に感化されて外交官を目指した」という。外交官としても広報に携わる機会が多く、2016年には東京五輪組織委員会の広報局長とスポークスパーソンを兼務し、2020年からは外務省外務副報道官として活動したことが今回の起用につながった。

安倍内閣時代には内閣副広報官を務め、海外出張にも同行したことから安倍昭恵夫人とも親密になった。当時、昭恵氏が自らのフェイスブックに投稿した「霞が関女性官僚との女子会」の写真で、昭恵氏の両隣に座って微笑んでいるのは、当時首相秘書官だった山田氏と副広報官だった小野氏だ。

こうした首相官邸との縁の深さも、「今回、菅首相のお眼鏡にかなった理由の一つ」(政府筋)とされる。ただ、「飲み会を断らない女」と広言し、違法接待を受けて失脚した山田氏とは対照的に、小野氏は「会食はできるだけ断った」ことで上司の不興を買い、職場で苦労したという経験も持つ。