昨今の経済現象を鮮やかに切り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第39回。

企業の実力で回復したのか? 

2020年後半の企業業績の回復は著しい。全企業の経常利益はほぼ前年並みになった。

しかし、このかなりの部分は、政府の給付金などによるものだ。2020年7〜12月において、支援策が経常利益に占める比重は、全企業については16.9%、中堅・中小企業では、実に約3分の1にもなる。支援策がなかったとすれば、2020年10〜12月期の経常利益の対前年同期比は、全企業で14.5%減、中堅・中小企業では、25.4%減となっていただろう。

法人企業統計調査によれば、企業の業績は2020年10〜12月期に顕著に回復した。

対前年同期比でみて、全企業(金融保険を除く)の経常利益は0.7%減と、ほぼ前年並みになった。

しかし、企業の実力だけで本当にこれだけ回復したのだろうか?

そうではないと考えられる理由がある。

まず、売上高の回復に比べて、利益の回復が顕著すぎる。

2020年10〜12月期における売上高の対前年同期比は4.5%減だ。ところが、上に見たように、経常利益は前年並みに回復している。

通常、利益は売上高と同方向に、もっと大きな率で変動する。前年同期に比べて売り上げが4.5%減であれば、利益はもっと大きな減少率になっていないとおかしい。

このように不自然な現象を起こした原因は、政府補助以外には考えられない。

実際、雇用調整助成金、持続化給付金、家賃補助金など、多額の政府の給付金や助成金が支出されている。さらに、自治体を通じた休業手当などもある。

これらの総額は10兆円を超える。他方で経常利益は、2020年10〜12月で18.5兆円、2020年7〜12月で30.8兆円だ。だから、経常利益のかなりの部分は、政府補助によると想像される。

以下では、どのようなルートを通じて政府支援が企業利益に影響したかを分析する。