政府は、新規感染者数や病床の逼迫状況が解除の目安を下回ったとして、首都圏の緊急事態宣言を3月21日に解除した。だが、感染者数は下げ止まり、すでにリバウンドというべき状況が起きている。

この1年間、迷走を続けてきた日本政府の新型コロナ対策。数百億円が無駄になったアベノマスク、機能していなかった接触確認アプリCOCOA、タイミングの悪いGoToトラベルなど、国民には不信感が募るばかりだ。

一方、一部メディアが未承認の治療薬を​奇跡の薬と称して取り上げ、これをすぐに使用すべきと主張する専門家もいる。また、著名な外科医が独自のコロナ対策案を菅義偉首相に提言、メディアが大きく取り上げた。

コロナの治療をしていない専門家たちの動きに、埼玉医科大学総合医療センターの岡秀昭教授は違和感を抱いていた。

「第4波は来る、と考えてコロナ対策を立て直すべきです。しかし、いま注目されているコロナの情報や対策案は、治療現場との乖離があります」

コロナ治療をめぐるギャップとは一体どういうことなのか、コロナ治療の第一人者である岡秀昭教授が語った。

200人超の患者を診てきたコロナの治療現場

埼玉県川越市に位置する、埼玉医科大学総合医療センター。3年前、感染症指導医の岡秀昭教授が1人で総合診療内科を立ち上げ、現在は9人の医師が所属する。このメンバーを中心にほかの診療科医師の応援も得ながら、コロナ専用のICU(集中治療室)4床、軽症・中等症の23床で、重症患者を中心に200人を超えるコロナ患者を治療してきたという。

「第3波のピーク時は、ICUの4床はつねに埋まり、中等症患者のベッドも使って最大7人の重症患者を受け入れていました。人工呼吸器やエクモ(体外式膜型人工肺)を装着するので、24時間体制の管理です。患者は麻酔で眠っているので、オムツ交換や、床ずれを防ぐための体位交換、痰の吸引などもしなければなりません。

コロナのICUに必要な医師や看護師などのスタッフは、1日のべ約30人。治療期間が約2カ月の長丁場になるケースも多い。対応人数を超えた重症患者を診る状態が、昨年12月から今年2月末頃まで続きました」

岡教授は日本感染症学会の指導医として、医師向けの新型コロナ感染症の治療マニュアルを出すなど、この分野では知る人ぞ知る存在だ。また、病院長補佐として埼玉医科大学総合医療センターのコロナ対策を担当している。