脱炭素社会に向けた動きが加速する中、総合商社各社も否応なく対応を迫られている。

焦点の1つとなるのが各社のIPP(独立系発電)事業。出資を通じて事業に参画する発電所の電気を販売する事業だ。各社は近年、電力需要が高まる東南アジアでIPP事業の展開を強化しており、中でも発電コストの安い石炭火力発電は収益柱の1つだった。

ただ、石炭火力発電は天然ガス火力発電の2倍の二酸化炭素(CO2)を排出するとされている。世界的に気候変動対策が進められる中、各社は石炭火力発電事業を継続するか否か、決断を迫られている。具体的な方針を明示できない企業は、場合によっては投資家からダイベストメント(投資撤退)を突き付けられることもありうる。

ベトナム「ブンアン2」は継続

その象徴的な例が総合商社の三菱商事のケースだ。同社は韓国電力公社などと共同で進めるベトナムのブンアン2石炭火力発電所(出力60万キロワット、2基)について、今のところ事業計画継続の姿勢を崩さないでいる。

国際協力銀行(JBIC)は2020年12月、同事業に対するプロジェクトファイナンスを決定。民間金融機関と韓国輸出入銀行を加えた協調融資総額は約17.6億ドル(約1900億円)にも及ぶ。

石炭火力発電所の新設計画には、投資家やNGOなどから厳しい視線が注がれている。JBICの前田匡史総裁は3月2日の会見で、「現在のところ、ブンアン2以降の案件で融資を検討しているものはない。民間銀行も新規の石炭火力発電所への融資は難しくなっていくのではないか」との認識を示す。

三菱商事も新規の石炭火力発電所案件には取り組まない方針を示している。にもかかわらず、ブンアン2をなぜ継続するのか。

三菱商事で電力ソリューショングループを率いる中西勝也常務執行役員は、「日本では停電が年平均7分とほとんどないが、ベトナムではいまだに年平均で1000回、12時間停電する。ベトナムの電力事情は深刻で、世界の工場となりつつあるベトナムの経済成長が一定の段階を迎えるまで、必要最小限の石炭火力は必要ではないか」と説く。ベトナムの電力事情と経済成長を考慮すると、ブンアン2からの撤退は難しいというわけだ。