――ETF買い入れの問題点をどう考えますか。

中央銀行が株を購入するのは非常に異例のこと。ほかの中銀はどこもやっていない。ECB(欧州中央銀行)はマイナス金利政策を実施しているが、株は買っていない。アメリカのFRBも、2020年春の新型コロナ危機対応で社債やMBS(モーゲージ担保証券)の買い入れなど、あらゆる緊急措置を行ったが、株は買っていない。

株式市場は自由主義経済の根幹を成す。投資家の自らの相場観や企業の将来性に対する評価によって株価はついており、リスクがあるとわかった投資家が取引している。そういう株式市場に中銀が介入すべきではないというのは、どこの中銀にも共通している哲学だ。

取引所には、流動性が急に枯渇して株価が暴落するような場合には、取引を一時停止したり、値幅制限をかけたりする仕組みがある。それに加えて中銀が株を買い支えるというのは本来ありえない。

ETF購入はやめられない

――日銀は今後も必要に応じてETFを買い入れる方針です。完全にはやめられないのでしょうか。

もんま・かずお/1957年生まれ。1981年東京大学経済学部卒業、同年日本銀行入行。1988年ペンシルバニア大学ウォートン校経営大学院MBA取得。調査統計局長、企画局長を経て2012年5月理事。金融政策担当として白川方明総裁のもとで「2%物価安定目標」の採択に至る局面を担当。2013年3月から国際担当としてG7などの国際会議で黒田東彦総裁を補佐。2016年6月から現職(撮影:今井康一)

買い入れが始まった2010年当初は今よりはるかに小規模で、しかも異例な時期が終わればやめるという意図を持って始めた。

ところが(黒田東彦総裁が就任した)2013年に、物価2%目標とETFの購入をヒモづけたことで性格が変わった。2%目標を達成できない間はETF購入をやめられないという構図をつくったわけで、2013年が大きな分かれ目となった。

――物価2%目標はいつになったら達成できるでしょうか。

達成時期はまったく見えないし、達成できるかもわからない。過去25年間で1%以上のインフレでさえ滅多になったことはなく、ほとんどゼロ近傍が続いている。

仮に1%を目標にしても達成が難しいのが日本の物価の実情だ。しかも過去25年の間に戦後最長と戦後2番目に長い景気拡大期があり、失業率もコロナ禍直前にはバブル期と同水準近くまで低下していた。今後も強い景気拡大が来ても物価が上がるメドは立たない。

――2%目標自体をやめるべきとの議論もあります。

もちろん本来はやめるべきだ。日銀の法律上の責務は「物価の安定」なので、物価の安定が達成できていれば無理な金融緩和はしなくていいし、2%という特定の数値目標を掲げる必要はない。