――利上げに先行するテーパリング(量的緩和の規模縮小)の開始はいつになりそうでしょうか。

コロナの収束が確認できないと、なかなかその議論には行けないだろう。バイデン大統領が演説したように、7月4日の独立記念日までに生活が正常化し始めれば、テーパリング開始は2022年になるとしても、その議論を今年の年末までに始められるかもしれない。

――サマーズ元財務長官らが過去40年で最も激しいインフレが発生するリスクを警告しています。

私は非常に低いリスクだと考えている。1970年代と近年とでは物価の形成の仕方がまったく違う。アメリカは2%の物価目標を2012年に導入したが、その後9年間の物価上昇率の平均は1.5%にとどまり、2%を上回ったことはほとんどない。

その正確な要因はわからないが、多くの人が指摘するのがグローバル化や情報技術を中心とした技術革新だ。米中のデカップリングや産業の国内回帰など若干の修正はあっても、グローバル化の基本的な流れに変化はない。

デジタル化も今後ますます進んでいく。需給逼迫やペントアップ需要でインフレが一時的に上昇したとしても、サマーズ氏らが心配するような、2%を超えてどんどん上昇していくようなインフレは考えにくい。

コロナ次第で株価に大幅調整リスク

――株式や為替など今後のマーケットのゆくえをどうみていますか。

株価は、PERが20倍を軽く超え、企業業績が今後2〜3年にかなり改善することを前提にしないと正当化しにくい水準になっている。バブルとは言わないが、ここからさらに上値を追うのは簡単ではないだろう。

逆に、よいシナリオが崩れてくると、比較的大きな調整に入る可能性がある。短期的には調整局面に入るリスクのほうが大きいとみている。

為替は、年初から足早にドル高円安が進んだが、1ドル110円を超えて一本調子に円安に向かうモメンタム(勢い)はない。アメリカの金利上昇基調が変わらないとすれば、緩やかな円安基調が続くとみられるが、これまでのスピードが速すぎた分、当面は調整が続くのではないか。

――最大のリスク要因は何でしょうか。

やはりコロナの問題だ。ワクチンの持続性や変異株への有効性はまだよくわかっていない。アメリカ経済の6%成長シナリオが崩れた場合には、株価を中心に相当な再調整の可能性がある。日本への影響も避けられない。

――米中対立の影響についてはどうですか。

これからは米中という異質の大国が併存する世の中がニューノーマルになっていく。トランプ氏が対決姿勢を強めたことで世界経済が大きく悪化したわけでもなく、米中問題によって世界経済が大きなリスクにさらされると考える必要はない。

技術や軍事面での競争は当然あるし、バイデン政権の場合、同盟国を巻き込んで人権などの面で対決姿勢が鮮明になっている。だが、経済面での米中関係はすでに深く、中国からの輸出に頼らなければアメリカ国民は生活できない。アメリカ企業も中国で大きな収益を得ている。

日本や欧州にしても、中国との経済的な結びつきは非常に強い。価値観や哲学が違うという理由で経済関係が壊れ、経済全体の停滞をもたらすことにはならないだろう。

著者:中村 稔