数年前まで、不動産市場では「2020年問題」に関心が集まっていた。2020年問題とは、2020年の夏に東京で開催される(はずだった)オリンピック・パラリンピックが閉幕後、「五輪特需」の剥落により建築ラッシュが一巡し、不動産開発の調整で取引が制限・価格が下落するおそれを指す。

ニッセイ基礎研究所が2019年2月、不動産のプロに「東京の不動産価格のピーク時期はいつか?」を尋ねた「不動産市況アンケート」(第15回)の結果によると、「2019年」との回答が最も多かった。2019年10月に消費税率が10%に引き上げられ、東京五輪の関連投資もおおむね2019年中に一段落するという見立てが背景にあった。専門家の間でも不動産価格のダウンサイドリスクが強く意識されていた。

下がらない新築マンション価格

では実際、2020年問題は現実のものとなったのだろうか。2020年の実質GDP成長率はマイナス4.8%となり、戦後2番目の落ち込みとなった。リーマンショックの影響があった2009年(マイナス5.7%)以来、11年ぶりのマイナス成長だ。とくに「輸出」がマイナス12.3%と大きく落ち込み、続いて「個人消費」(マイナス5.9%)と「設備投資」(マイナス5.8%)が足を引っ張った。

加えて、2020年に年間4000万人の訪日を目指した外国人客数の政府目標は、ふたを開けてみると約411万人という惨憺たる結果だった。いずれも新型コロナウイルスという見えない恐怖が国内外の経済活動を自制させたためだ。

にもかかわらず、都心の新築マンションに値下げの予兆はない。エリアによる濃淡はあるものの、平均値としての価格下落は起こっていない。不動産経済研究所の調査によると、この5年で東京23区内の新築マンションは17%弱、値上げされている。2020年の23区の年平均分譲価格は7712万円まで高騰した。もはや、購入予算は「年収の5倍」などといった空虚な数字に現実味はない。