2021年3月13日、JR各社や大手私鉄ではダイヤ改正が行われた。今回の改正の目玉の1つが、大都市圏を中心とした終電の繰り上げである。

首都圏では、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を図るため、同年1月から一部の路線で終電の繰り上げが行われていたが、これはいわば“緊急措置”的なものであった。これに対し、ダイヤ改正からスタートした終電の繰り上げは、コロナ禍の前から検討されていたもの。「終電繰り上げ」という手段は同じでも、その目的はまったく別のものだ。

では、そもそも今春の終電繰り上げはどういう目的があったのか。それは、線路や架線のメンテナンス、あるいはホーム柵の設置などといった、鉄道施設の工事時間を確保するためである。

終電後のレール交換作業

1月のある日、JR西日本の終電後の夜間作業現場を取材した。

23時すぎ、現場近くにある工事事務所に、40人ほどの作業員が集結。開始前の点呼が始まった。健康状態のチェックに続いて、今日の作業内容が確認される。この日は、東海道本線茨木駅付近にある約500mのレールを新しいものに交換するというもの。その手順はもちろん、現場へ向かう経路や、資材をどこに置くかなどを、順を追って確認してゆく。

その後、ヘルメットや反射チョッキなどの安全保護具をきちんと着けているか、「携帯用特殊信号発光機」と呼ばれる赤い棒ライトが正常に点灯するかを、隣同士で確認。「現在の時刻は23時20分……現在30秒!」と、各自が持っている時計の時刻を正確に合わせるのは、作業時間に制約がある現場ならではだろう。

交換が終わった後はすぐ列車が通過するため、作業の遅れは許されず、また「気がついたら予定時刻をすぎていた」などということがあってはならない。現場を最初の列車が通過するのは、翌日の午前5時01分。そこから逆算し、タイムリミットである4時40分にアラームが鳴るようにして、万全を期す。