中国の中堅自動車メーカーである長城汽車は3月29日、燃料電池車(FCV)に関する企業戦略を発表し、SUVタイプの同社初のFCVを2021年末までに発売すると明らかにした。

FCVは「新エネルギー自動車」の一種で、水素と酸素の化学反応により発生した電気エネルギーでモーターを駆動する。排出するのは水だけで、二酸化炭素(CO2)や有毒ガスを出さない。水素の補給時間はガソリンの補給時間とほぼ等しく、航続距離は電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)に勝っている。

(訳注:新エネルギー自動車は中国独自の定義で、EV、FCV、PHVの3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)

しかし、水素は爆発の危険がある取り扱いが難しいエネルギーであり、FCVの普及のために新たな燃料供給インフラを整備するのは容易なことではない。

長城汽車ではFCV技術の研究開発を乗用車と商用車の2種並行で進めている。同社董事長(会長に相当)の魏建軍氏によると、FCVの技術は中型から大型の乗用車に適しているという。

「同じSUVタイプで比較すれば、FCVは製品の製造から廃棄にいたるまでの環境負荷を表すライフサイクルアセスメント(LCA)の面でEVに勝り、安全性と巡航距離の面でも優れている」。そう魏氏は説明する。

利益がないばかりか損がでる可能性も

一方で、同氏は現時点で存在する問題についても次のように率直に指摘した。

「FCVの商品価値をさらに引き上げることが必要だ。事業化しても利益がないばかりか、損を出すこともあるかもしれない。だが、重要なのは将来を見極めることだ。

自動車業界は販売量を拡大することでコストを下げなければならない。中国のFCVが年産50万台になれば、FCVの駆動ユニットのコストはガソリンとほぼ同等レベルまで下がる可能性がある」

本記事は「財新」の提供記事です

現在、世界でFCVの乗用車を量産しているメーカーは、日本のトヨタ自動車、本田技研工業(ホンダ)、韓国の現代自動車(ヒュンダイ)などがある。トヨタとヒュンダイは中国ですでに関連ビジネスを開始しており、2社ともにFCVの技術を商用車にも応用しようとしている。

長城汽車は、2022年に開催される冬季オリンピック用に乗用車タイプのFCVの納入を計画している。さらに大型トラック、物流車両、大型バスへの展開を進め、船舶、鉄道などの領域にも広げていくもくろみだ。2025年には世界のFCV市場でトップ3に食い込むことを目指している。

(財新記者:劉雨錕)
※原文の配信は3月30日

著者:財新 Biz&Tech