イギリスに続き、世界で2例目の「孤独・孤立担当大臣」が日本に誕生した。児童虐待や産後うつ、多胎育児、DVや引きこもり、ヤングケアラーなど、コロナ禍でいっそう顕在化した社会課題に対応するため2月に新設され、内閣府に対策担当室もできた。3月には、経済的困窮で生理用品を買えない若い世代の「生理の貧困」問題に対し、国が重い腰を上げた。

「孤独対策」や「生理政策」など、これらの重要な政策を先導した1人の女性議員がいる。伊藤孝恵。2016年の参院選において、泡沫候補から当選を果たし「愛知の奇跡の子」と呼ばれた一期生議員が、その圧倒的な仕事力を養ったのは、リクルートで働いた10年間だったという。ベストセラー『起業の天才!』でリクルート創業者・江副浩正の生涯を描いた大西康之氏が話を聞いた。

JR福知山線脱線事故で上司を亡くして

――新卒でリクルートに入社されたわけではないんですね。

新卒で入社したのはテレビ大阪(テレビ東京系)です。初配属は営業局、その後、報道局に異動し、大阪府警記者クラブのサブキャップとして事件取材やドキュメンタリー番組を制作していました。

営業から報道に異動する際、「たかえちゃん、がんばってね」と書かれたのし袋に1万円札を入れて送り出してくれたのが、2005年のJR福知山線脱線事故で亡くなった小杉繁さんです。異動の際、御祝儀をくれる上司なんて後にも先にも小杉さんだけでした。

ひしゃげた電車の1両目から、ご夫妻の遺体が守り合うように抱き合ったまま発見されたと聞いたときは、泣きながら「弊社取締役小杉繁夫妻の死亡確認」のニュース速報を打ちました。

私が井手正敬さん(JR西日本で社長、会長を務め、事故時は取締役相談役)に取材申し込みの手紙を送り続けたのは、懺悔を聞きたかったからでも、多くの乗客の命を奪った運転手の過失や、JR西日本の体質を批判したかったからでもありません。

こんな理不尽な事故はなぜ起きてしまったのか? その根っこに国鉄民営化によって生まれた歪みはなかったか? 犠牲になられた方や、自分の愛する家族はなぜ死ななければならなかったのか? これからも生きていく遺族の苦しみに対してJR西日本が手向けるべきは、ひとえに「二度とこのような悲劇を繰り返さないための具体策」ではないのか? 

それを最も知るであろう、国鉄改革3人組と称された人の言葉を聞きたかったからです。井手相談役はすべてのメディア取材を断っておられましたが、「君の大切な上司を奪ってしまって申し訳なかった」と言って、私たちのインタビューには応じてくださいました。