クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス(DP)号」で新型コロナウイルスの集団感染が発生してから1年あまり。対処に当たった中心メンバーが厚生労働省DMAT(災害派遣医療チーム)事務局の近藤久禎次長(50)と神奈川県の阿南英明・医療危機対策統括官(55)だ。

『世界を敵に回しても、命のために闘う ダイヤモンド・プリンセス号の真実』を上梓した毎日新聞の瀧野隆浩氏が聞き手となって行われた対談の第2回は、当時、国内外のメディアから厳しい批判を浴びた船内の感染対策について、現場関係者しか知りえない事実と、その後の日本の感染症対策の基礎となった貴重な教訓について語る。

第1回:「横浜クルーズ船感染」現場医師が今明かす真相

船内は「アンダーコントロール」状態だった

――それにしても、当時の新聞を読み返すと、「誤算」「対応後手」「失敗例」などと、DP船内の感染対策は厳しく批判されていましたね。

阿南:いろいろ批判はされていたけど、(2020年)2月5日の乗客への自室待機(隔離)要請以後、大きな感染の拡大はなかったはずですけどね。

近藤:そもそもDMATが船内活動を開始して5日目になる2月11日に、日本環境感染学会のチームが乗船して感染対策をチェックして「問題なし」という判断をしてもらっています。注意すべき点を指摘してもらってA4版1枚の書類にまとめてありますが、おおむね大丈夫だと。

それから、活動の進み具合でいえば、(汚水処理のためDP号が埠頭から離岸した)11日までに、救急措置が必要な人は船から降ろし、薬が必要な人への処方も一応終わりました。そうして15日ぐらいまでには、具合の悪い人をどうやって早期に見つけ出し、陽性患者をどういう手順で搬送するかなどのルーティンはほぼ固まっていたんです。

何より、連日30〜40人ほどいた新規の発熱患者が、15日以降はほぼ1桁になりましたから。これが大きい。安倍(晋三・元首相)さんの五輪招致演説で有名になった言葉を借りるなら、「アンダーコントロール(制御されている)」状態だったんです。