公式プロパガンダを見ると、主要経済分野において不足と崩壊が生じ、今や部品などの供給が止まっていることがわかる。咸興と安州の巨大な化学肥料の工場はもはや正常に機能しておらず、集団農場にはその不足分を埋めるため、人糞を上品に言い換えた「都市部から出る肥料」が運ばれている。

北朝鮮事情に詳しい政治アナリストのウィリアム・ブラウン氏が詳述したところによると、北朝鮮では壊れた、時代遅れの設備を動かす燃料、電気が不足している。

北朝鮮に関する信頼できる情報源デイリーNKによると、政権は軍の配給物資の不足により、兵役期間を10年から7〜8年に短縮した。兵役を終えた兵士たちは、再び鉱山や工場での労働に動員されている。

「国境地帯では、餓死している人もいる」

外国の外交官や援助活動従事者たちが、比較的状況の良い平壌から逃げ出している。離任を控えたロシア大使館の職員は、フェイスブックに「医薬品を含む生活必需物資の極端な不足と、保健衛生上の問題を解決できる可能性の欠如」について投稿している。

北朝鮮での長期にわたる活動経験を持つ西側の援助活動の専門家は、「東京オリンピックに参加しないという北朝鮮の決断は、保健衛生上と政治的な決定であり、私にしてみれば、驚くべきことではない。北朝鮮に残っている欧米人はごくわずかであり、北朝鮮の人々と直接接触することも非常に困難になってきている。北朝鮮で何が起こっているのか実際のところ誰もわからない」と、語る。

中国との国境地域で参考までに話を聞いた限りでは、生活必需品の欠乏が深刻化していることがうかがわれる。昨年9月には、北朝鮮国内の生活困窮者を密かに支援している宣教師が、人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチの調査員であるリナ・ユン氏に次のように語っている。

「ここ2カ月間、中国から北朝鮮へ食料がほとんど入っておらず、物乞いが以前にも増してたくさんいる。国境地帯では、餓死した人もいる。石鹸、歯磨き粉、電池がない。単三電池がなければ家の時計を動かせず、時間さえもわからない。時計はずっと止まったままだ」

パンデミックを喰い止める目的で1年以上前に始まった国境封鎖は、北朝鮮の計画経済の崩壊を加速化させ、それまで格差を埋めてきていた二重構造の市場経済の運営を弱体化させてきている。