NHK受信料値下げにつながる放送法改正案について、政府・与党が今国会ではいったん「廃案」とし、法案内容を一部修正して秋の特別国会か臨時国会に再提出する方向で調整に入ったことが、永田町に波紋を広げている。

同改正案は受信料の早期大幅値下げを目指す菅義偉首相の意向を踏まえたもので、今国会での成立が菅政権にとっての実績になるとみられていた。

会期末まで2カ月を残した時点で重要法案の成立を断念するとなれば、「極めて異例の事態」(自民国対)だ。総務省幹部の違法接待問題に絡んで発覚した、放送事業者の外資規制違反が今国会成立断念の背景にあるとみられる。

総務省の違法接待問題で審議困難に

総務省にまつわる一連の不祥事には菅首相の身内も絡んでいたとされる。「今国会で菅首相への野党の追及を避けるための逃げ恥作戦」(立憲民主幹部)との見方も広がっている。

放送法改正案は、政府が2月26日に閣議決定・国会提出した。内容は、①テレビを設置していながらNHKに受信料を払っていない世帯からの割増金徴収、②受信料引き下げの原資確保のための積立金制度の創設、などが柱となっている。

武田良太総務相は閣議決定後の記者会見で「法案の早期成立に全力を挙げ、月額で1割を超える思い切った受信料の引き下げにつなげる」と語っていた。

政府・与党は当初、今国会成立を目指して野党との折衝を進めていた。しかし、総務省幹部の違法接待問題に絡み、衛星放送関連業者の東北新社子会社による外資規制違反が判明。総務省は5月1日付で子会社の衛星放送事業の認定を取り消すことを決めた。

その後、フジテレビジョンやニッポン放送などを傘下に持つ「フジ・メディア・ホールディングス」(認定放送持ち株会社、東証1部上場)が4月5日、2012年から2014年にかけて放送法などの外資規制に違反していた可能性があったと発表した。総務省担当部局がこれを見過ごしていたことも判明し、野党側が猛反発。4月下旬の改正案審議入りも困難視されていた。