名門で華やかなイメージを持つ東京女子医大の医師給与が、最低ランクという自慢できない現実もある。

「給料が安くても東京女子医大の人気が高いのは、間違いなく国内トップレベルの医療が行われているからです。それに公的な資金を獲得して研究を行う場合には、女子医大のネームバリューが圧倒的に有利になります」(30代医師)

このように目的意識を持つ医師が、安月給を承知のうえで、東京女子医大を選択しているのだという。

外部病院でのアルバイトという救済措置

ただし、それでは生活を維持できないので、救済措置が用意されている。それは、外部の病院でのアルバイト=「外勤」である。東京女子医大では週1回の研究日が設定されており、その日は「外勤」に当てられていた。

「外勤先の病院は大学の医局が斡旋します。医師の経験にもよりますが、報酬は、1日働いて8万〜10万円。医局はスルーして、各医師に報酬は直接支払われます。これで安い給料を補填するのが、長年の慣行となっていました」(東京女子医大・元准教授)

医師のアルバイト料は、他の業種と比べると破格だ。ただし、医療ミスなどで、多額の賠償を医師個人が要求されるケースも増えている。つまり、医師個人がつねにリスクを負いながら仕事をしているのだ。

外勤中の賠償責任保険料は、基本的に各医師の自己負担になる。さらに、学会の会費や医学誌などの費用を合わせると、年間数十万円が自腹になるという。こうした経費を引くと、手元に残る金額はそれほど多くない。

こうした特殊な事情から、研究日の「外勤」は、東京女子医大だけでなく、大半の大学医学部でも認められてきた慣例だった。経営側としてはコストを抑えながら、優秀な医師を確保するための苦肉の策ともいえる。

しかし、東京女子医大の経営陣はこの慣例を一方的に破った。

「外勤をしていた研究日を廃止する」という方針を今年2月に打ち出したのである。不意打ちを食らった医師たちの間に、衝撃が広がった。

【2021年5月20日18時13分追記】初出時の外勤の対応にかかわる部分について一部事実関係に誤りがありましたので上記のように修正しました。

方針を受け入れるか、それとも大学を去るか──

選択を迫られた結果、100人を超える医師が退職を決断したのである。