今年に入り一段と注目が高まった、中国・新疆ウイグル自治区における人権問題。3月にはEUやアメリカが相次いで、中国当局者に対して、欧米で保有する資産凍結などの制裁を科した。この動きに反発した中国も対抗措置を発動。欧米諸国と中国との軋轢が増し、経済界にも影響が波及している。

ウイグル問題で、大きな影響を受けた企業の1つが、スウェーデンのH&Mだ。昨年、H&Mは新疆ウイグル自治区の労働者が雇用されている可能性のある工場と取引関係があったとの報道を受け、取引先におけるウイグル民族への強制労働の疑いと懸念から、新疆産の綿花の調達停止などを表明した。

ところがH&Mの対応に対して、欧米諸国の制裁のタイミングも重なり、3月以降中国国内で批判が噴出。同じくウイグル問題への懸念を示した複数の欧米ブランドの不買運動が一気に広まる中、中国で原料調達や取引を行う日系企業の対応からは戸惑いの様子が見て取れる。

ウイグル問題への言及を避けた経営陣

「ノーコメントです」――。

4月8日に開かれたファーストリテイリングの決算会見。柳井正会長兼社長は、新疆産の綿花の使用の有無や人権問題への見解について複数の記者から質問が及ぶと「ノーコメント」を何度も繰り返した。

「全部の工場、あるいは綿花の生産に関して監視して、問題が出たら即座に取引停止をしている。人権は非常に大事なことで、やるべきことはすべてやっている」。柳井会長兼社長はこう述べたうえで、「これ以上発言すると政治的になる」と踏み込んだ発言を避けた。

翌週の4月14日には、無印良品を展開する良品計画も決算会見を開催した。同社は会見の直前、「無印良品の綿とサプライチェーンについて」と題したリリースを公表。会見では杉山孝太執行役員が「こちらに書いている内容が、私どもとして説明できることのすべて」と語り、松﨑曉社長はウイグル関連の質問に回答しないスタンスを押し通した。

良品計画はリリースで、無印が原料として使う新疆産の綿は現地の農場に第三者機関を派遣して監査を行っていると説明。「これまでの監査で法令または弊社の行動規範に対する重大な違反は確認していない」と強調した。