新型コロナウイルスのパンデミックから1年以上が過ぎ、世界経済は新たな局面を迎えている。とくにアメリカ経済の回復加速とともに為替市場では年初からドル高傾向に転じており、今後の方向性が注目される。

そこで、リーマンショック時に財務省財務官を務め、その後にIMF(国際通貨基金)の副専務理事として金融危機後の対応に当たった篠原尚之氏(現在、三菱重工業取締役)に、為替相場から見た世界経済の現状と見通しについて聞いた。

安全資産としての円の評価に変化

――最近の為替市場をどう見ていますか。

今年1月が節目となった。それまでは新型コロナ危機を受けたFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の金融緩和を背景にドル安基調が続いていたが、今年に入ってドル高へと流れが変わった(4月28日現在1ドル108円台後半)。

背景には、ワクチン接種の進展に加え、1.9兆ドルの追加経済対策などバイデン政権による積極的な財政支出でアメリカの景気回復期待が高まったことがある。一方、欧州や日本の経済はまだ沈んだままの状況だ。

3月にかけて急速に進んだアメリカの長期金利上昇とドル高はやや過剰反応だとしても、中期的に実効レートでみたドル高は徐々に進んでいくと見ている。コロナとワクチンの問題などに不確実性が残るため、マーケットは多少揺れるだろうが、流れとしてはドル高に傾いているのではないか。

――具体的なドル円相場の見通しは。

個人的なイメージとしては今年年末に1ドル110〜115円。来年以降もドル高円安の基調が続く可能性が高まっていると思う。

注目すべきは、コロナ危機下でアメリカがいくら金融緩和をしても、アメリカの長期金利がいくら下がっても、かつてのように1ドル100円を割り込む円高にはならなかったことだ。円が持っていた「安全資産」としての性格が忘れられているような感じがする。