ゲームや音楽などのソフトコンテンツの制作にさらに資金を投じるほか、買収や出資により魅力的なIPを確保することを継続する。コンテンツを届けるプラットフォームとなる動画配信サービスとの協業や、自社のDtoCプラットフォームであるPSを通じたコンテンツ販売も強化する。

単にエンタメを伸ばすのではなく、エレキ事業との掛け合わせも重視する。ソニーにはゲームエンジンやイメージセンサーなどで高い技術力がある。これらが、コンテンツを作ったり届けたりするうえで、競合との差別化につながるからだ。今回掲げた2兆円には、こうしたテクノロジーへの投資も多く含まれる。

このようなグループ間の連携は、今後の成長において従来以上に重要な意味を持つ。今年4月、ソニーからソニーグループへと63年ぶりに社名を変更したが、ただ名前を変えただけではなく、組織体制の再編を伴ったものだった。

事業連携強化の体制は「整った」

これまでソニーは本社にエレキ事業が特権的に所属していたが、それを独立させ、ソニーグループは本社機能に特化した。エレキ事業を音楽やゲームなどほかの事業と同等の位置づけにし、本社は各事業と等距離で関わる。吉田社長は「すべての事業がフラットにつながる新しいアーキテクチャー(組織体制)により、グループとして連携強化の体制が整った」と語る。

グループ間の連携は、新たに取り組むモビリティーなどの領域でも顕著だ。2020年に発表した電気自動車「ビジョンエス」は、デバイス事業が持つセンサー技術を生かす一方、スマートフォン「エクスペリア」の技術を用いて車内制御を組み立てている。

吉田社長はオンラインで行われた経営方針説明会で、投資計画や将来のビジョンを掲げた一方、「10億人」以外に具体的な数値目標は語らなかった(記者撮影)

「モビリティーの領域において、モバイル技術は決定的に重要になる」(吉田社長)との確信の下で開発に邁進するが、エンタメも同様に、グループ連携により「ソニーにしかできない」ビジネスに育てられるかが今後問われる。

吉田社長の就任した2018年度に始まった中期経営計画は2020年度で終了。平井一夫前社長の時代から、エレキの赤字事業の改革、CMOSイメージセンサーへの集中、そしてコンテンツIPへの投資に取り組んできた。これらに一定のメドをつけた吉田社長は、2021年度以降目指す方向性について、冒頭の「10億人」以外に具体的な数値目標は打ち出さず、ビジョンを語るにとどめた。

現状は甘くはない。ソニーが足場とするエンタメでは、アメリカのアマゾン・ドット・コムやネットフリックスといった異次元のライバルが立ちはだかる。電機大手の「勝ち組」は、次のステージに上がったばかりだ。

著者:佐々木 亮祐