日本企業の海外M&Aは進化しているのだろうか。21世紀に入った20年間で日本企業による海外での買収件数は9390件、総額はおよそ120兆円に上る(MARR調べ)。日本企業が海外に成長を求めて、その手段としてM&Aを用いることが定着したと見てよいだろう。

大型買収の成否割合が改善した

筆者の調査では、日本企業による海外M&Aはプラザ合意の1985年から本格化し、その草創期に実行した買収金額100億円以上の大型買収(資源、不動産、金融を除くすべての業種)は116件中51件が失敗、成功は9件であった。

しかし、著者の近刊『海外M&A 新結合の経営戦略』で明らかにした通り、今世紀に入った発展期では139件中、失敗は28件に留まり、成功が17件に増え、成否割合が改善した。ダイキン工業やDMG森精機、グローリー、大日本住友製薬、アドバンテスト、テルモ、そしてリクルートなど、海外M&Aで絵に描いたような成長を実現した企業も出てきた。

買収は、その戦略マトリックスから成熟市場占有、供給連鎖占有、製品群拡張、新市場形成、そして防御の5つのモデルに分類することができる。

M&Aの戦略マトリックス (出所:『海外M&A 新結合の経営戦略』)

日本企業は、これまで成熟市場占有と供給連鎖占有の買収モデルを多く試みてきた。市場支配と組織能力を高めて事業の深化を企図するもので、これは自社の牙城を守る買収でもある。

一方で、増収を目的として、製品群を拡張して新市場の形成を狙う探索型の買収も増えてきた。昨今、日本企業の間で増え始めたCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)はこの買収モデルに該当し、こちらは新たな市場開拓への攻めの買収である。

また、買収で周辺事業に参入して、自社の成熟または新市場での寡占への脅威を取り除く防御モデルの買収もある。自社の寡占を脅かす企業が業界内から出現するとは限らないからだ。

筆者は買収で利益成長を実現した企業が、これらの買収モデルをどのように活用してきたのかを吟味した。その分析から、海外M&Aを成功に導くには、3つのポイントがあることがわかった。以下、紹介していこう。