持病の悪化を理由に2020年8月末に突然首相を退陣してから9カ月余。安倍氏は昨秋から「体調も回復した」と趣味のゴルフを再開し、各種会合にも時折顔を出していた。今春からは複数の議員連盟の顧問などを積極的に引き受け、自らの悲願とする憲法改正でも旗振り役を買って出るなど、自民党実力者としての政治活動を本格化させた。

安倍氏への批判のもとになっていた「桜を見る会」問題では、2020年暮れに安倍氏の公設第1秘書が政治資金規正法違反(不記載)で略式起訴された。これを受けて安倍氏は国会招致に応じ、「事実に反するものがあった」と国会での虚偽答弁を認め、年明け以降も謹慎状態を余儀なくされていた。

しかし、安倍氏は4月に入って自民保守系グループの議員連盟「伝統と創造の会」の顧問に就任。さらに、自民党憲法改正推進本部の最高顧問も引き受けるなど表舞台に復帰した。

改憲論議のリード役に意欲

憲法改正は、安倍氏が首相在任中に実現を目指したが果たせなかったテーマ。わざわざ推進本部の最高顧問に就任したのは「改めて改憲論議をリードする意欲」(自民幹部)からとみられている。

そこで注目されるのが、昨秋の自民総裁選で安倍氏の後継者となった菅首相との政治的な間合いだ。菅氏が首相に就任した後、憲法改正など安倍氏が委ねた宿題への慎重姿勢をにじませたことで、党内には両氏の不仲説が広がっていた。

しかし安倍氏は、菅首相の4月中旬の訪米や6月11日からイギリスで始まった先進国首脳会議(G7)出席に先立ち、いずれも初体験となる菅首相に対し、自らの経験に基づき実戦的な助言をして不仲説を打ち消してみせた。