安倍氏は憲法記念日の5月3日には、それまで封印していたテレビ情報番組に生出演。9月に自民党総裁任期満了を迎える首相について、「当然、継続して首相の職を続けるべきだ。昨年、総裁選をやったばかりで、1年後にまた総裁を代えるのか」などと述べ、党内の一部でささやかれる菅首相早期交代論を強い口調で牽制した。

これに呼応するように、菅首相も同日の改憲派集会へのビデオメッセージで、安倍前政権下で自民党がまとめた自衛隊明記や緊急事態条項など、改憲4項目の実現を目指す考えを強調した。

「みそぎ」後に安倍派へ衣替え

安倍氏は3日のテレビ番組の中で「菅首相を一議員として全力で支えることが私の使命だ」と自らの再々登板説も否定。自民党内では「また『モリカケ』や『桜』で国民から批判されるより、キングメーカーとして党に君臨するつもりだ」(長老)と受け止められた。

安倍氏周辺も「次期衆院選の当選でみそぎをすませれば、細田派を安倍派に衣替えして最大派閥の領袖となる」と明言する。そうなれば、今後の総裁選も含め、「党内の権力闘争の陰の主役になるのは確実」(自民長老)だ。今回の菅首相へのエールも「続投への援護射撃というより、自らの復権戦略の一環」(同)と勘繰る向きも少なくない。

こうした揣摩臆測の背景には、菅政権での自民党内の権力構造の複雑さがある。安倍前政権と同様、内閣の大黒柱として行政府ににらみを利かせるのは、安倍氏の盟友でもある麻生太郎副総理兼財務相だ。その一方、自民党は二階俊博幹事長が総裁の菅首相以上の権勢を誇っている。

内閣と党の支柱となる麻生、二階両氏は「前政権時代から反目し合う関係」(麻生派幹部)とされる。2020年9月に党内の圧倒的支持で菅政権が発足した段階では両氏の対立も目立たなかったが、コロナ禍への対応で菅内閣の支持率が急減した辺りから「状況が変わった」(同)。

菅首相は「内閣は麻生氏、党は二階氏と連携することでバランスに腐心してきた」(側近)。次期衆院選や自民党総裁選を乗り越えて政権を維持するためには、麻生、二階両氏の支援と協力が不可欠だからだ。

しかし、コロナ・五輪政局の結末次第では「オリパラ開催中に自民党内でポスト菅レースが動き出す可能性がある」(有力閣僚)のは否定できない。その場合、「麻生、二階両氏の主導権争いが始まるのは間違いない」(同)とみられている。