「スターバックスになってから、よく通うようになりました。以前の店にも行きましたが、子連れでは少し入りにくくて……。今度の店はテラス席もあり、立ち寄りやすいですね」

近くで信号待ちをしていた、乳児を連れた女性に話を聞くと、こんな答えが返ってきた。

東京都西東京市の「スターバックス コーヒー 西東京新町店」──。都下の人気エリア・吉祥寺につながる五日市街道沿いにある同店は、木をふんだんに使ったつくりだ。実は以前は、当地で40年営業を続けた「珈琲館 くすの樹」(以下「くすの樹」)だった。なぜ大手チェーンが跡地にこうした店を開いたのか。それぞれの思いを関係者に聞いた。

「西東京新町店」(右上)は、玉川上水(左側)と五日市街道が並行する場所にある(筆者撮影)

「町の喫茶店」への思いもつなぐ

「店の敷地内には、江戸時代から続く樹齢のクスノキがあり、『くすの樹』さんが人気店で、お客さまの思い入れが強かったことも知っていました。『これは一大事の仕事になるな』と身を引き締めました」

西東京新町店の設計を担当した及川和茂さん(スターバックス コーヒー ジャパン 店舗開発本部 店舗設計部 フリースタンディングデザインチーム)は、こう本音を明かす。

一級建築士の資格を持つ及川さんは、同社が「リージョナル ランドマーク ストア」と呼ぶ、日本の各地域の象徴となり、周囲の景観に合った店の設計にも携わってきた。

だが、同系統の店の大半は観光地にある。一方で今回はそのタイプではなく、立地は交通量の多い住宅街。いわば「町の喫茶店」だ。どんな意識で設計に取り組んだのか。

「今まで、ここに通われていた方の思いもつなげたい。地域に愛される店となることを重視しました。何を残して、何を変えるかを整理していったのです」(及川さん)