ともに「こんなに(「くすの樹」に)肩入れしてくれるとは」と評価していた。スターバックス側も何度も話し合いを重ね、最終的に店舗デザインに合意を得た。ちなみに最初の設計図のプレゼンテーションでは、前店主側から率直なリクエストもあったという。

「当初の案では、天井の高さが6mだったのですが、前の店の吹き抜け感も生かしたいという思いを受け、高さを9mに変えました。店内の床も、モルタルから温かみのあるフローリングに変えるなど、細かい部分は修正しています」(設計を担当した及川さん)

「珈琲館 くすの樹」を長年運営した下田欽司さん(左)と明仁さん(筆者撮影)

地域の人気店に育ったのに、なぜ閉店してしまったのか

少し引いた視点で、日本の喫茶店を生活文化面から考察したい。

「くすの樹」が人気店になった理由の1つは、メニューの創意工夫だろう。一般に、昭和時代の喫茶店は男性客中心で、ドリンクメニューは「ブレンド、アメリカン、アイスコーヒーで注文の6〜7割がまかなえた」(当時を知る中堅チェーン店の経営者)店もあったという。そんな時代でもコーヒーメニューを多く取りそろえ、フードやスイーツ開発にも力を入れた。

地域の人気店に育ち、ここまで思いを込めた店を、なぜ閉店してしまったのか。

「いろんな理由がありますが、私が40歳で開業したときに30年続けられたらいいな、と思いながら時が経過していきました。近年は業績も最盛期に比べて下降気味で、消費税も2019年から10%に上がることになった。また、店内の設備も老朽化し、一部は大幅な修繕も必要でした。そこで2018年、開業40年で区切りとしたのです」(欽司さん)