今年に入って韓国法曹界が揺れに揺れている。

1月に元慰安婦の損害賠償請求訴訟で日本政府に支払いを命じる判決が出たかと思えば、わずか3カ月後に別の元慰安婦が訴えた訴訟で却下の判決が出た。

元徴用工が日本企業相手に訴えた訴訟では、2年半前に韓国の最高裁判所に当たる大法院が原告勝訴の判決を出し、確定しているが、6月には逆に元徴用工の訴えを却下する地方裁判所の判決が出た。似たような訴訟で正反対の判決が相次いで出されるという前例のない事態になっている。

いずれも日本が絡む訴訟で、判決の違いは日本政府や日本企業に賠償金支払いを認めるか認めないかという点だが、昔ながらの親日か反日かで分けられるほど単純な話ではない。結論を先に言えば、判決が分かれたのは、憲法など韓国国内の論理に重きを置くか、国際法など国際社会のルールに重きを置くかの違いにあるようだ。

相次ぐ判決で「国内派」の論理が前面に

国内派の論理が前面に出たのが2018年10月の大法院による元徴用工判決だ。日本企業への賠償金支払いを命じる判決で、確定後は日本企業の資産の現金化の手続きが進められたこともあって、日韓関係が決定的に悪化した原因にもなった。

日本政府は、元徴用工問題は日韓請求権協定によって「請求権問題は完全かつ最終的に解決された」という立場で一貫している。それに対し、大法院判決は「請求権協定は植民地支配の不法性を前提としていないから、不法性を前提とする損害賠償請求権は協定の対象外であり、成立する」という論理を展開している。日韓両国政府が合意した日韓基本条約の世界を、植民地支配は不法であるという韓国の論理で根本から否定したのである。

次に元慰安婦問題が俎上にのぼった。日韓両国政府は2015年、日本政府が資金を提供し、救済のための基金を作ることなどで合意した。これに対し、元慰安婦はこの合意が憲法違反であることを認めるよう憲法裁判所に訴えた。2019年12月の判決は「憲法裁判所が判断するものではない」というもので、日本政府は安堵した。