アメリカのカマラ・ハリス副大統領がカリフォルニア州司法長官を務めていたとき取り組んだのが、サブプライム住宅ローン危機に関連して生じた、銀行による住宅の不正な差し押さえなどの問題です。内容を確認せずに機械的に処理する「ロボット署名」が行われたことで、本来は手放す必要がない人まで住居を奪われるケースがありました。2011年1月にカリフォルニア州司法長官に就任し、銀行と闘った際の記録をハリス氏の自伝『私たちの真実 アメリカン・ジャーニー』から一部抜粋・再構成してお届けします。

差し押さえ通知をもって助けを求める人々

初登庁の日、私は幹部チームを集め、全州による銀行の捜査にただちに加わる必要があると告げた。長年チームに属しているマイケル・トロンコソを司法長官室首席法律顧問に、ブライアン・ネルソンを特別補佐官に任命し、徹底的な調査と情報収集を指示した。

オフィス内では闘いの準備が進んでいた。一方、オフィスの外では、自分たちが誰のために闘っているのかをつねに意識させられた。イベントを開けば、そこには私に直接助けを求めようとやってくる人たち──5人、10人、あるいは20人──が必ずいた。たいていの人が書類をもってきていた。じゃばら式ファイルや茶封筒からはみ出さんばかりの、住宅ローン契約書類や差し押さえ通知や手書きのメモを。なかには何百マイルも車を運転して私に会いに来た人もいた。

スタンフォードで行った小規模なヘルスケアのイベントでは、私の話をさえぎって立ち上がった女性がいた。顔には涙が流れ、声には絶望がにじんでいた。「助けが必要なんです。どうか助けてください。銀行に電話をして、家にいさせてくれるよう言ってください。お願いです。お願いします」。彼女の痛ましい姿はいまも心に残っている。

あの女性のように、人生をかけて闘いながら、自ら州司法長官に会いに来る手立てもない人は数えきれないほどいた。そこで、私たちのほうからそうした人のもとを訪れようと、州の至るところのコミュニティーセンターで意見交換会を開いた。

彼らの話を聞きたかったし、チームメンバーにも彼らに会ってもらいたいと思ったからだ。会議室で銀行幹部と向き合うとき、自分が誰のためにそこにいるのかを思い出せるようにするために。ある意見交換会で、私は一人の男性と、銀行とのあいだに抱えているトラブルについて話していた。するとそばで静かに遊んでいた幼い息子がやってきて、父親の顔を見上げてこう言った。

「ねえ、パパ、『すいめんか』って何?」(訳注/不況などによって資産価値が急落し、住宅ローン残高が住宅価格を上回っている状況を「underwater mortgage〔水面下住宅ローン〕」という)。

その子の目には強い恐怖が見てとれた。本当に父親が溺れてしまうとでも思ったのだろう。考えただけでもぞっとする。だが、その言葉は現実を的確に映し出していた。実際に多くの人が破産していたのだ。それよりもっと大勢の人は指の先でかろうじて崖っぷちにしがみついていた。そして日がたつにつれ、絶望の淵にいる人々は一人、また一人と力尽きていった。