コロナ禍で旅行業界は苦境の真っ只中にある。外出自粛の要請は長引き、観光地から人の姿が消えて久しい。夏本番を迎え、旅心をかき立てられている人も多いことだろう。そんな厳しい状況にある旅行業界は、以前よりアクシデントが日常茶飯事であり、そのしわ寄せはすべて添乗員にいってしまう。

理不尽なのは客だけではなく、旅行代理店、土産店などで働く“ギョーカイ人”も同様だという。67歳の現役派遣添乗員の梅村達氏の著書『旅行業界グラグラ日誌』より一部抜粋し再編集のうえ、現場での抱腹絶倒なエピソードを3回にわたり紹介する。

「お客の落とす金、総取り」

旅行会社が販売する団体ツアーは、普通は企画を練る部署の担当者が作る。すなわちツアーの行き先から始まり、観光スポット、昼食処、土産物店などの立ち寄り先を組み合わせて、ツアー商品を作成する。泊まりのツアーならば、それに宿泊施設が加わる。

「普通は」と述べたが、「普通」でない場合も間々ある。立ち寄り先の業者の方でツアー企画を立案し、旅行会社に売りこむのだ。旅行会社が話に乗れば、自社のツアーとして売り出し、参加者をつのるという次第である。

ツアーの概要は以下の通り。Aという地元で、ボス的存在の土産物業者がいたとしよう。Aは仲間のB、C、そしてDという食事処に声をかける。それにEなる観光スポットを組み合わせれば、ツアー商品の一丁あがりというわけだ。

Aが資金力のある会社で、B、C、Dが仲間ではなく、子会社だとしよう。するとうまみは2倍にも、3倍にもなる。すべて同じ資本系列を回るため、客の落とす金が総取りとなるからだ。

またその手の土産物店のスタッフは、鍛えぬかれていて、セールストークの上手なことといったらない。一例をあげれば、こんな具合だ。

「このホシブドウ、いつもは6袋で1000円だよ。今日は1つおまけして、7袋で1000円にしちゃう。けれどもネ、ここだけの話、○○会社のお客様は特別。もう1袋サービスして、8袋で1000円ポッキリ。今日だけの出血サービスだよ」