この4月から「高年齢者雇用安定法」が改正となり、70歳までの就業機会を確保することが企業の努力義務となりました。現在は65歳までの雇用が義務化されていますが、そこからさらに5年という期間が努力義務となったことで、すべての企業ではないものの70歳まで会社に残って働ける可能性は増えてきたといっていいでしょう。

ところが現状では、定年延長どころか再雇用でも70歳までの雇用機会を設けているところはそれほど多くはありません。帝国データバンクが今年の2月に調べた結果によれば、定年を70歳まで延長するところはわずか3.4%です。比較的多いのは70歳までの継続雇用制度を採用するところで、これは25.4%です。その他の制度を合わせても何らかの就業機会の確保を予定しているのは43.6%ですから半分以下です。

さらにいえば、これは制度をつくるということであって、全員が必ず70歳まで雇用されるわけではなく、成果や能力の評価によっては雇用されないということもありえます。したがって、望めば誰もが70歳まで同じ会社で働けるというわけではありません。

70歳までの雇用をめぐる昨今の記事やコメントをみていると、「自己評価が甘すぎる」とか「自分の価値を冷静にみるべきだ」という比較的シビアな意見がみられますが、70歳までの雇用確保への取り組みはまだ始まったばかりです。むしろ、それ以前に現在の雇用延長制度、すなわち60歳から65歳までの再雇用制度にも問題点はあります。

再雇用後の仕事に「判断する業務」はない

私は、自分自身も定年後に再雇用で少しの間、働いた経験がありますので、実体験からいわせてもらうと、再雇用でうまくいくかどうかの分かれ目は性格とか能力といった要素よりも、もっとシンプルな要因で決まります。結論からいえば、「現業で働いている人」はうまくいくことが多いですが、「管理職」はうまくいかないことが多いのです。私自身、定年前は管理職でしたので、60歳で定年になった後に再雇用で働き始めたものの、結局半年で辞めて自分で起業しました。

でも、これは考えてみれば当たり前の話です。現業で働いている人、例えば製造現場で作業に従事していたり、営業マンとして第一線で顧客開拓をしていたり、あるいは経理で実務をやっていたりという人であれば、自分のやるべきタスクがはっきりしています。もちろん、人によって能力差はあるものの、少なくとも“仕事がある”ことは間違いありません。

ところが、管理職のまま、定年を迎えた人は、とたんに“仕事がなくなる”ことが多いのです。管理職の仕事は「判断すること」です。でも定年後は多くの場合、管理職ポストを外れて一兵卒になりますから、管理職の業務=判断することはなくなってしまいます。もちろん、管理職としての仕事は、判断することだけではありません。自分の部門の業務をスムーズに進めるために上層部への根回しやトラブルが起きたときの対応、部下の評価といったこともありますが、多くの場合、そういった業務はなくなります。

定年後の再雇用において管理職のまま勤務を続けられるのであればいいですが、そういうケースはまだ少ないでしょう。したがって再雇用されたものの、管理職からは外れ、重要な仕事を任されることはまずありません。どんな内容であれ、自分が誰かに必要とされていると感じられれば、働くことに生きがいを覚えるでしょうが、そうでなければモチベーションは大きく低下します。