米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。

独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

「泥縄」にならざるをえない背景

「泥縄だったけど、結果オーライだった」。筆者もかかわった新型コロナ対応民間臨時調査会(コロナ民間臨調)の結論では官邸スタッフの言葉として、この言葉を引用した。その意図は、結果オーライだったから万事問題なしとするのではなく、「場当たり的な判断には再現性が保証されず、常に危うさが伴う」という点に警鐘を鳴らすことであった。

にもかかわらず、ワクチンをめぐるガバナンスにおいても「泥縄式」危機管理を繰り返し、場当たり的な対応に終始した。もちろん、ワクチン開発などは一夜にしてできるものではなく、「泥縄式」で対応できるものではない。しかし、ワクチンの承認、調達、接種などで場当たり的な対応が繰り返された。われわれはまた過去の危機に学ぶことを怠ったのであろうか。

「泥縄」とは泥棒を見てから縛るための縄をなうことを意味するが、そうならないためには最初から縄をなっておけば良い。しかし、日本にはパンデミックが起きたときのために用意しておいた縄(ワクチン生産能力)はなかった。